第2話 転生前
自分で言うのは憚られるが、僕はおおよそ日本人としては残念な部類に近い人間だった。
大学在学中に病気を患い入院。治療が長引き退学することになる。
得たのは多額の奨学金の返済義務と高卒というステータス。
なんとかコツコツ返しているものの、二十代後半になっても完済の目処は立っていない。
手に職はなんとか付けられたものの、所謂アルバイトの類い。もらえる給料では日々の生活だけでていっぱい。とても貯金している余裕なんてない。正直この先の人生のことを考えるとお先真っ暗って感じで憂鬱なんてところじゃない気分になる。
そんな僕は幾つか自分にルールを課していた。
一つはジョギング。毎朝30分ほど軽く走ることだ。
神経を肉体に集中させて体を動かせば、なんというか余計なことを考えなくてすみ、その間だけはストレスから解放される気がするのだ。
そしてもう一つ。
それはジョギングの折り返し地点で行われる儀式。
そこにはちょうど神社がある。
僕はその神社に作法を守りながら入り、お詣りをする。
賽銭箱に小銭を入れ、今日なすべき誓いを心の中で呟く。
必ずやり遂げる。そう神に誓う。
もちろん一つ一つはそうたいしたモノじゃない。
資格を取るための勉強をするとか、バイトをしっかりするだとか、休みの日は掃除洗濯を必ずするとか、まぁくだらないことでもなんでも。
僕は自分に甘い男だから。
そうやって神様に誓いを立てて、破ったらバチが当たる、と自分に言い聞かせて日々やるべきことを心に刻む。
これはもう5年間も、ほぼ毎日繰り返している僕の日常の一部だ。
ちなみにこの神社に祀られているのは所謂、荒御魂。荒ぶる神、厄災の化身である。
だからこそ、なんか破ったらほんとにバチが当たりそうっていう感じもここで誓いを立てる理由の一つだ。
そうして今日の誓いを立て、神社を出て、いつも通り帰り道を走る。
そして、いつもとは違うことが起きた。
───信号は青になった。
───その女子高生はスマホを見ながら歩いていた。
───普通なら緩やかにスピードを落として止まるはずだった車が、逆に猛スピードで突き進み始めた。
僕は咄嗟に小走りから全力疾走へとギアを切り替えた。
凄まじい衝撃が身体中に走る。そして浮遊感。
目の前が真っ赤に染まる。
─────その日、一人の英雄が生まれた。
異世界逆転撃 🐦🔥フレイム @Zphoenix40
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界逆転撃の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます