「第9話」忠犬乱入
風が吹く。
対峙する両者の間をすり抜ける風が吹く。
左に転校生、ポニテちゃん。
俺で遊ぶだの奪い取るだの馬鹿げたイカれたことを転校初日にぶちかまし、その権利を賭けてこの勝負を考案したイカれたやばいやつ。
それに対し右にアポロちゃん。
俺のことを友達ではなくオモチャだといい、常日頃から俺のことを調教しながら遊ぶ頭のおかしいが、悔しいけど顔がめちゃくちゃ可愛い俺の絵の師匠。
両者とも、優勝の賞品である俺(別に俺は一切許可は出していないけどな!)が出すことになっている、戦いの合図を待っている。
互いに殺意を出し、アポロちゃんに関してはぶっ殺してやるとブツブツ呟きながら。
「……ファイッ!!!!!」
「「死ねぇ!!!!!」」
物騒な怒号をお互いに飛ばしあったのち、二人はお互いのズボンに手をかけた。さしずめ相撲の力士の”がっぷり四つ”と言ったところだろうか? いやぁそれにしても年頃の女の子同士がこうやって身を寄せ合っているというのはなんとも思春期の俺としては──。
「おいあんコペェ!!!!!」
「ワンッ!?」
アポロちゃんの限りなく低くした声が俺の神経に”立て”と命令する。俺は訓練、いいや調教された軍人のごとく即座に立ち上がり、思わず敬礼してしまう。
「なんでございましょうかご主人様ぁ!(やけくそ)」
「お前っ……このポニテ野郎のズボン引っ剥がせ!」
「ファッ!?」
急に何を言い出すんだこの野郎。とうとう俺に犯罪を強いる気なのか!?
「できるわけねぇだろそんなこと!」
「黙れぇ! お前誓っただろ、私の犬になるって! あらゆる命令を命懸けで聞く下僕になるって!!!!」
「言ってねぇし要求されてねぇよ!」
だがそこで俺は気づく。
アポロちゃんが押されていること……もう少しで、土俵の外側に弾き出されてしまうことを。
「へっ、口ほどにもねぇなぁアポロちゃんよぉ! これじゃあお前の愛犬にも見捨てられるわな!」
「っ……?」
なんだ、この気持ち。
なんかメチャクチャムカムカする、イライラする。
あいつ、今アポロのことを馬鹿にしたのか?
「場外押し出しなんてクソみたいな方法で決着を着けるつもりはねぇよ! テメェのそのズボン引っ剥がして、ストッキングも破って……お子様パンツを磔にしてやらァ!!!」
「っ……! こん、のぉ」
俺は想像する。
敗北し、下着をひん剥かれたアポロの姿を。
「……ちっく、ショォォォォォッッ!!!」
もう駄目だ、我慢ができない。
俺は土俵の中に入り込み、アポロちゃんのズボンに手をかけた不届きなるポニテ女に突っ込んでいった!!!
「食らえ……忠犬タックルッッ!!!!!」
「ぎゅはぁ!?」
ポニテ女を吹き飛ばし、俺は荒い息を吐きながら……こちらに向かってバキバキ指を鳴らすポニテ女を睨みつける。
「御主人様のパンツ拝みてぇなら……まずは俺のズボンをひん剥くんだな」
「テメェ……アタシは女子だぞ……?」
「へっ、そうだな。じゃあ俺はなぁ……」
構え、そして俺はニィっと笑う。
「こいつの、犬だ」
ピリピリとヒリつく空気感の中、俺は密かにある作戦を巡らせていた。
(やっちまったなぁ……)
……ノリで割り込んじゃったけど、どうすればこの場を穏やかに収めることができるんだろう、と。
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