「第7話」転校生からの挑戦状

 D◯O様ジ◯ジョ勃ち事件から一週間が経った。

 俺はアポロちゃんと仲直りを済ませ、いつも通りにクソみたいなイタズラやらクソムーブやらを真正面から受け止め、玉砕する日々を過ごしていた。


 「今日は転校生が二人来ます。お前ら仲良くしてやれよ〜?」


 担任の体育会系教師がそう言うと、俺とアポロちゃんは顔を見合わせた。


 「転校生だってよ、しかも二人か」

 「別に私らに関係ないだろ」

 「関係はあるだろ、面白そうなやつだったら仲良くしたいじゃん?」

 「……クソが」

 「は?」


 何故かわからないがアポロちゃんは俺に背を向けてしまった。なにか気に触るようなことを言っただろうか? いいや、これはいつもの情緒不安定だろう……俺はそう思いながら、入ってくる転校生二人に目をやった。


 一人は背が高くてスタイルのいい女子だった。

 俺の身長は高い方ではあるが、それと同じかちょっと低いぐらい……女子にしてはかなり高い身長を誇るその子は、中々に破壊力のあるスリーサイズを備えていた。


 もう一人は対象的に、小さなTHE女の子という感じだった。

 少し鋭い目、ポニーテール……自分がもしもデコピンしてしまえば即死してしまいそうなほど華奢なその子は、雰囲気だけならアポロちゃんっぽかった。


 「へぇ、二人共女子なんだな」

 「ブスだな」

 「お前さぁ……」


 なーんか変だなこいつ。そんなことを考えていると、転校生のうち一人……身長が低い方の子が俺の空いていた席に座った。

 折角だから話しかけてみよう。そう思い、俺は後ろからその子の肩を叩いた。  


 「……はじめまして、だな! よろしく!」

 「なんだぁオメーきんもちわりぃなぁ!?」


 え?

 

 「……え?」

 「はぁ?」


 思わず俺もアポロちゃんも顔をしかめた。

 だが目の前の女子の眼光は鋭く、言葉の連撃は止まらない。


 「初対面の女子の体に触るとか頭おかしいにも程があんだろ、馬鹿じゃねぇの? アタシと友達にでもなりたいのかぁああん?」

 

 あっこれやばいやつだ、確実にヤバイ奴だ。

 どう考えてもやばいよこれ、なんかもう色々とぶっ飛んでるもん。


 「おい、ポニテ!」


 アポロちゃんが席を立つ。

 そんな彼女を見て転校生……ポニテちゃんは容赦なく睨みつける。


 「なんだぁ……テメェ……?」

 「こいつはお前に話しかけようとしただけだし、そのために肩を叩いただけじゃん。悪くないよ」

 「アポロちゃん……!」


 俺は不覚にも涙を流しそうになった。こいつは、俺のことをストレス発散用のサンドバックじゃなくて……きちんと友達として……!  


 「こいつは、あんコペは私のオモチャだ! お前みたいな性悪女は別の陰キャでも漁ってろ!」

 「あー何も聞こえなかった! 俺なんっも聞いてないよ! ええ聞いてないです!」


 畜生コノヤロウやっぱりか。一度引っ込めた涙は別の意味を持って垂れ流れた。

 

 「……へー」


 ポニテちゃんはそんな俺とアポロちゃんを見て、にやりと笑った。


 「面白そうだな、お前。あんコペだっけ? お前、アタシのオモチャになれよ」

 「そもそも俺は誰のオモチャでもないんですがそれは」

 「人のものを取っちゃいけない、転校生さんはそんな最低限の当たり前も守れないのかなぁ〜?」


 お前はお前でなんでそんな敵意むき出しなの?


 「じゃあ、こうしようよ。アタシと、お前……勝ったほうがこいつで遊ぶ権利を手にするんだ」

 「いいよ、来いよ。私が勝ったらもうこいつで遊ぶんじゃねぇぞ」


 ポニテちゃんはにやりと笑い、アポロちゃんを指差した。


 「今日の昼休み、校庭の鉄棒の前にあんコペを連れてこい。そこでお前をぶっ飛ばしてやるよ……!」

 「望むところだ外来種女……!」


 そんなわけで、俺の意見人権を完全に無視したくっそどうでもいい戦いが行われることになった。

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