第47話 へんな人

『こわい。たたかれたら、どうしよう。あやまったらゆるしてくれるかな。

 たたかれるのは、いたい。あしたもたたかれませんように』


【◯月✕日 あめ さいしょはみんな、やさしい】

『さいしょはみんな、アタシをたたかない。

 でもしってる。アタシがバカだから、みんなをおこらせちゃう。

 かしこくなりたいけど、どうしたらいいか、わからない。


 このいえの人は、まだやさしい。

 でもいつかアタシにあきれるんだ。


 バカでごめんなさい。

 おねがいだから、たたかないで。おおきなこえ、ださないで』



【◯月✕日 くもり おしごと】

『アタシはこのいえに、メイドとしてきたらしい。

 メイドというのは、いえの人のおせわをする人。


 きょうはいえのそうじをした。


 きょうはしっぱいしなかったとおもう。


 きょうはたたかれなかった。あしたもたたかれませんように』



【◯月✕日 あめ ✕✕✕✕✕✕(涙で滲んで読めない)】

『そうじするの、わすれた。

 アタシだってわすれたくない。


 ✕✕✕✕✕✕(涙で滲んで読めない)


 ごめんなさい。


 たたかないで』



【◯月✕日 はれ メモ】

『わすれたくないことは、メモをすればいい。

 そうメイド長の人にいわれた。


 メイド長は、へんな人。


 アタシがしっぱいしても、アタシをたたかない。へんな人。


 わすれたくないことは、メモをする。


 あしたは、かいだんのおそうじ』

 


【◯月✕日 くもり へんな人たち】

『このいえには、いっぱい人がいる。

 なまえはおぼえられないけど、へんな人たち。


 アタシをたたかないし、いきなり大きなこえをださない。


 あったかいごはんをくれる。もじをおしえてくれる。


 でもしんじたらダメ。


 いつかアタシがうらぎってしまうから』



【◯月✕日 くもり わすれたくないから】

『わすれたくないことはメモをする。

 

 メイド長の人は、ローズさん。アタシを叩かない、変な人』


 

【◯月✕日 はれ 女の子】

『今日は、たまごやきが作れた。

 同い年くらいの女の子と、いっしょにれんしゅうした。


 なんども失敗したけど、誰もアタシを叩かなかった。


 女の子はサザンカという名前。


 アタシが失敗しても叩かない。ずっとわらってる、変な人』



【◯月✕日 はれ ごしゅじんさま】

『アタシをやとったのは、ロベリアという人たちらしい。


 こわそうなお母さんと、なにをかんがえているのかわからないお兄さん。

 それからかわいい妹さん。


 その人たちがアタシをやとった。


 アタシのことをほとんどかぞくみたいに扱ってくれている。変な人たち。

 

 オルタンシア様。ライラック様。ナナコ様』



【◯月✕日 はれ 変な人】

『アマリリスさん。

 

 なにをいってるのか理解できない。


 変な人。


 でも優しい人


 ギンランさん。


 無愛想だけど、アタシのことを気にかけてくれる。変な人。優しい人』



【◯月✕日 はれ 1年】

『アタシがこの屋敷に来て、1年が経過したらしい


 読み書きも、ずいぶんうまくなったと思う。


 ふと1年前の自分の日記を読み返してみたら、あまりにも子供っぽくて笑ってしまう。


 あのときのアタシは怯えてばかりいた。失敗したら叩かれて、殴られて、怒られると思っていた。


 もちろん失敗したら怒られることもある。だけれど、彼ら彼女らは暴力的なことはしない。しっかりと理性的に解決方法を教えてくれる。一緒になって悩んでくれる。


 それが家族というものだと教えてくれた。


 感謝してる。


 ずっとこの家で、一緒に過ごしたい』

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