REPLAY(リプレイ)~外れスキルで無能扱いされた俺、幼馴染みを救うべく何度でもやり直す(仮)

たくミン☆

第1話 『転向者』来る

       【プロローグ】


――ザクッ!


 迷宮にて、魔物のアギトが無慈悲に俺の胸板を貫いた。これで何度目か……まーいい。『パターン』は覚えた。

 薄れゆく意識の中、俺の脳裏に走馬灯のように『再生リプレイ』映像が流れる。問題の場面で、俺は『停止』をかけた。


    【ここから再生しますか?】


 目の前に現れる無機質な文字。だが『今の俺』にとって、これほど『頼もしい』ものはない。

考えるまでもない……俺が迷わず【Y】を選ぶと、視界が歪んだ。


 最初こそ戸惑ったが、もう慣れた。俺にとって『必要不可欠』なのだから。



 ◇ ◇ ◇


 俺の名は真上 裕まかみ ひろ、15歳高一。俗に言う『平凡』な高校生だ。目覚ましアラームが鳴る前、便所で起きた。

朝一で考えるのが、今日は学校にいくか否か。

 ちょうどやるゲームがなくなったので、今日くらいは行くか。そろそろ単位も危ねぇしな。


 俺は今、ボロアパートで独り暮らしをしている。昔から両親とは、折り合いが悪かった。学費など、最低限のカネは送ってくる。足りない分は、バイト等でまかなっていた。


 深夜バイトが出来ないのが難点だが、小遣い稼ぎにはなった。ゲームの新作も買えるしな。


「うおっ⁉ 眩しぃ!」


 俺は思わず、朝日を手で遮った。なんせ普段は土日のバイト以外、カーテンを閉めた部屋に引きこもってるからな。

 よく男のクセに、『色白』とか言われてる。髪も色素が抜けて灰色、ゲームのやり過ぎか目は赤く充血している。


 これじゃまたアイツ・・・に注意されるな。


「あっ、裕! 今日は登校するのね⁉」


 そう思った矢先、声を掛けられた。赤毛ショートの女子が腰に手を当てて、俺を見据えていた。


 松木 花怜まつき かれん、俺の『幼馴染み』だ。


「もぅ! 連絡してたら、迎えにいってたのに」

「要らねーよ、ガキじゃあるめぇし」


 花怜は昔から世話焼きだ。頼んでもねぇことを色々やる。それに登校するかどーかは、俺の気分次第だ。


「裕さぁ……今まで『色々』あったのは分かるけど、もう高校生なんだからちゃんとした方がいいよ? 自動進級じゃないからね」

「分かってるって。バイトもしてるだろ? ホント、花怜はお節介だよな」


 とはいえ、花怜には大きな『借り』がある。


 ガキの頃に俺がふざけて道路に飛び出した際、花怜が俺を庇って車にかれてしまった。花怜は生死の境をさ迷い、九死に一生を得た。俺も泣き明かし、そこから親との関係も悪化した。


 それが、今の『一人暮らし』に繋がっている。花怜には、いつか借りを返したい。


「分かってるならいいけどさ。でも裕が引きこもらず、たまにでも登校してくれて嬉しいよ」

「花怜は俺のお袋かよ。って、もう着いたぞ」


 時は5月、登校はGW明けて初だ。4月は入学式以来、何度か登校しただけ。教室に入ると、花怜は女子から「おはよ花怜」と挨拶される。

 クラス委員長の花怜は、人気もある。対称的に俺は「あんなヤツいたっけ?」という反応だ。


 幼馴染みを除いて、俺はいわゆる『ぼっち』属性だ。俺も群れる趣味はない。さっさと窓際の席に着く。ん? 前の席が『空いてる』が、誰か欠席か? まーあまり興味はないが。


「皆さん、おはようございます。連休明け、無事に登校できてよかったです。あら? 真上君、久し振りですね。お変わりないですか?」


 教室に担任の米本 亮子ねもと りょうこ先生(29歳独身)が入ってきた。生徒からは『ネムちゃん先生』の愛称で親しまれている。


 俺は「問題ありません」と短く答えた。隣の花怜に「ちょっと裕っ」と注意されるが、俺はあまり興味がなかった。


「コホン、とにかく元気そうでなによりです。今日は皆さんに『転校生』を紹介します」


 その一言で、皆が先生に注目した。男子は「先生、男ですか? 女ですか?」と食いつく。


「落ち着いて。エリカさん、入ってきて」


 ガラっと引き戸が開き、一人の『少女』が入ってきた。クラス中が息を呑む。それもそのハズ。


 腰までスラリと伸びた、金髪のロングヘアー。整った顔立ちにルビーの瞳が印象的で、『絶世の美少女』という表現がピッタリだった。

 パッと見、『帰国子女』といったところか? 少女は黒板の前に立つと、スラスラと『日本語』で自身の名を書いた。そこには……


【エリカ・シュタインズ・リボンズ】とあった。


「皆さん初めまして、エリカと申します。どうぞよしなに」


 振り向き挨拶した彼女に、クラス中が「おぉ」とどよめく。日本語まで流暢りゅうちょうに話した。仕草などから、俺とは最も縁がない『上位カースト』か。


「エリカさんって、どこの国の出身なのぉ?」


 早速、女子の一人が手を挙げて質問する。すかさず先生が「質問は後にしてください」と制すが、エリカは「お一つだけでしたら」と微笑。


「私の出身は、リボンズ王国ですわ」


「リボンズ……? 聞き慣れないけど、リスボンじゃなくて?」


 花怜が訊き返す。リスボンって、確かポルトガルの首都だったか。どう見ても、西洋系だしな。


「いいえ、リボンズで合ってますわ。私は地上こことは『異なる世界』より、転向・・しましたわ」


 シーン……その一言で、クラス中が沈黙する。女子らは「このコ、天然?」とヒソヒソと話す。


「あー静かに。エリカさんは、真上君の前の席でお願いします」


 俺の前かよ……空いてたのは、転校者用か。 エリカは着席する前、俺に一言。


また・・お会いできましたね」

「は…………?」


 俺は思わず、エリカを見上げた。記憶にねぇが、もしかしてガチの天然か? 注目されるから止めれ。俺は極力、目立ちたくねーんだ。


「さて、エリカさんの紹介も終わったところで……一時限目は、私の現国ですね」


――キンコンカンコーン。


 午前9時、始業のチャイムが鳴る。『日常』が始まった。俺も欠伸あくびを噛み殺しながら、教科書を開いた……


 瞬間。


――ビキッッ


 耳朶じだの奥に響く耳障りな音響。ほぼ同時、教室という空間が『侵食』されていく。な……なんだ? ゲームのやり過ぎで、俺の目がおかしくなったか?


 おもむろに目の前のエリカが、立ち上がった。



「……侵攻はじまりましたわね」

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