0014の十四 僕たちはずっとともだち
0014の十四 僕たちはずっとともだち
「おーい小僧でかけるぞ!」
「なんだよ藪から棒に……」
夕方俺が家に帰るなり妖神様がそう言ってきた。
「何縁屋の仕事だ! なんでも凄いことになっているらしい面白そうだから見に行くぞ!」
「ところでどんな案件なんだ?」
「ぃってからのお楽しみだ内容次第ではなかなかえぐいことになるがな……そん時は気を使って小僧の記憶を消してやる行くぞ!」
恒例となった膨らんだ妖神様に乗り暫く。
「ここだ!」
そこは山の中でドゴンドゴンと「ク……コロ……ヨウ……」何かの声? 音? が聞こえてきた。
「何の音だこれ?」
「ほう噂通り荒れているな……」
その音に向かって少し歩くとそこは山の岩肌が剥き出しになった斜面でそこには十歳くらいの少年らしき後ろ姿があるが……
「子供……いや妖怪が岩をぶん殴ってぶっ壊している!?」
「くそっ! 殺してやる! ヨウタ!」
十歳くらいの黒髪の少年に見える妖怪? が物騒なことを言いながら岩肌をぶん殴っていた。
その容姿はとても整っているようなのに美少年にはなぜか見えない幼い中にも大人の雰囲気を醸し出す男とかろうじてわかる中性的な不思議な少年に見える。
その身には漆黒のエネルギーらしきものをまとっている。
「噂通り面白いことになっているな」
「いやこれ大丈夫なのか? こんなのの縁結んだら最悪惨事……」
「何その時は言った通り記憶を消してやる! さっさと話しかけろ!」
「これ大丈夫なのか? 俺が話しかけてぶん殴られないよな?」
「全く肝が小さいやつだ! おいそこの小童! ワシらは縁屋だ話を聞け!」
「煩い! 黙れ!」
少年の姿の妖怪が妖神様をぶん殴ってきたが。
「ふん! 小童が片腹痛い! 喝!」
妖神様見えない壁たぶん結界でがきんという音ともに拳をはじき飛ばしが雷を放つと少年の妖怪? がぶっ倒れた。
この漫画のようなほほにびりびり来る衝撃波よかった最悪俺死んでいたかもしれない。
「しまった力加減を間違えてしまった縁の鏡に入れて連れて帰るぞ」
「気絶してるけど大丈夫なのか?」
「大丈夫だ意識のない神や妖も対象内だ。全ての神や妖がすんなり話など聞かんからな時にはこういう強引な方法も必要ということだ」
俺たちが気絶した少年の神? 妖怪? を縁の鏡に入れ家に帰っても目を覚まさず。
妖神様が起きても暴れないように術をかけてから俺たちは眠りについた。
『「君はだれそこで何しているの?」
「君には僕が見えるの?」
「うん見えるよ! 君はだれ?」
「僕は山の神この山の神だよ」
「じゃあヤマカミ君だね! 僕は陽太!」
「うん! じゃあヤマカミでいいよ! ヨウタ!」
「とりあえずこんなものしかないけど食べるポテトチップス?」
「美味しい! こんな美味しもの食べたことない! ありがとうヨウタ!」
「ヤマカミ君は大げさだな……まあいいやまたあとで持ってくるから一緒に食べよう!」
「ほんと? ほんとだね?」
「じゃあ今日から僕たちは友達だね!」
「うん友達! よろしくヨウタ!」』
「ツナグ朝よ」
そこで俺の意識は覚醒した。
「さて目を覚ましたな小童おっと暴れても無駄だぞ」
「なんだ少年の妖怪は起きたのかいや神か」
「よくわかったなさっさっと飯くって着替えてこい話はそのあとだ」
「へいへい」
俺が朝食をとり着替えて戻ってくると。
「さて話を聞こう」
「誰が話すカエルやろう!」
「なんだとこら! こっちのほうが神としての神格は上なんだぞ!」
「そういや今日夢見たんだがその陽大とかいう子友達なんだろどうこじれたらこんなことになるなんだ?」
「ほうすでに神の記憶を夢で読めるのかまあ今はいいな……いいからが話してみろ内容次第ではそいつを探すのを手伝ってたやろう」
「本当だな僕はヨウタを殺すぞ」
「よかろう勝手にせい」
「ちょっと妖神様!?」
「まあ聞け流石に我々もひどい惨事や悲劇を嬉々として鑑賞するほど悪趣味ではない。縁屋の結ぶ人子と妖の縁が結ばれるとは神々の干渉するにたる縁だけだ流石におぬしが想像する惨事はないはずだ。おそらくな。こやつはまだ神より妖に近いものよって縁を結ぶ対象になる」
「おそらくなって大丈夫なのか?」
「いいのかこの小童をほおっておれば最悪山に踏み入った人子に手を出し悪神になるぞ。そうなれば山を守る力が失わけ麓の家や道にがけ崩れや土砂崩れが多発し悪しき妖のたまり場となるそうなれば封印師妖魔使いが大勢で押しかけ神払いで退治するか封印するかのニ択だどちらにせよ山には人子は数十年踏み入れなくなるだろうな。仮にもこの小童はあの山をつかさどる山の神だからな」
「なら仕方ないか……やばくなったらとめてくれよまじで!」
「よかろうもしかしたら円満に解決するかもな」
「また無責任な」
「わしの予想はなかなか当たるぞワシは神の一柱だからな」
「わかったよ妖神様君の名前はヤマカミでいいんだよな? その陽太ってこのなれそめ聞かせててくれ」
「その忌まわしい名前を聞くと腸が煮えくり返る! 僕はずっと孤独だった山の神とは名ばかりに山を見守ることを命じられ何もすることもなく気が遠くなる時を山を眺める日々。そんな孤独な日々のある日あいつは現れた――」
『「ヤマカミ君あそぼ!」
「本当に来たんだ……てっきり昨日のは嘘かとおもったよ……出会ってすぐにそんなこと言うから……」
「僕はヤマカミ君を一目見たとき友達になりたいってすぐ思ったんだ。僕は本当に君の友達だよ!」
「友達かずっと僕も欲しかったんだ!」
「今日はトランプを持ってきたよやり方はね――」』
「ヨウタは僕と出会ってすぐ友達になろうといったんだ! すでに伝承は廃れ立ち入ってはいけない神聖な禁足地であることは多くの者に忘れ去られたとはいえあの山に足を踏み入れた以上本当なら僕はそれに罰を与えないといけなかった……今でもあの時罰を与え置けばよかったと後悔しているよ! その時の僕は初めての友達ができたことが嬉しくて失念していた!」
「結局楽しく遊べなかったのか?」
「いや遊べたさ! 何度も何度も最高な楽しく遊べたさ! だがヨウタは僕を裏切り忘れさった! 最高の友達といったくれたのに!」
「何があったんだ?」
「ちょうど十年近く前のことだ――」
『「ヤマカミ君明日は僕と秘密基地を作ろう!」
「秘密基地って何?」
「最高の友達遊ぶための特別な場所だよ!」
「うわーー面白そう! 雨風は防げるかな?」
「うん! たぶん! 段ボールいっぱい持ってくるよ!」
「後はい! ヤマカミ君の大好きなポテトチップスのりうま塩味!」
「わーいありがと!」
「じゃあ明日そこの岩の壁があるトンネルで待っていて!」
「うんわかったよヨウタ!」』
「それからヨウタは一度も姿を現さなかった――」
『あれから一年かまだ来ないなまだかな……」
「これで三年か早くまたポテトチップスが食べたいな……」
「五年かあっという間のはずなのに長かっな早くヨウタと遊びたいな……」
「七年たった七年のはずなのに涙が止まらない……まさか……」
「ヨウタ……ヨウタ……ヨウタ……ヨウタ……ヨウタ……ヨウタ……僕を一人にしないで……」
「これで十年ヨウタめ……僕をだましたな! 殺してやる! 神をたばかることがどういうことかその身に思い知らせていやる! 僕は君の最高の友達じゃなかったのか!」』
「なるほどそれで岩肌に八つ当たりを……」
「ああそうさ! 僕に人子を呪う力はない! しかし悪神になれば違う! そうなれば僕は山を離れられる!」
「そんなことになれば払われるか封じられるかの二択だそ!」
「関係ないヨウタさえ殺せれば僕は満足なんだ!」
「おぬしその感情は……まあ良い……本人に会って気づくとよいおい小僧縁の鏡を使えそのヨウタのやらのものは持っているか?」
「ここにヨウタからもらった菓子の袋がある! ヨウタへの憎しみが絶えないように常に持ち歩いている!」
「さあ縁の鏡を使え妖ならある程度の情報がないと使えん手だが妖に近くとも神相手ならこの程度で可能だ」
「わかった縁を照らせ」
この縁本人がその気持ちに気付けば惨事は避けられるはずそう心に浮かべると縁の鏡から光の線があふれ出した。
「どうやら生きてはいるようだな」
「当たり前だ生きているからこそ憎い! 生きているのに会いに来ないのは僕を忘れているに決まっている!」
「妖神様頼む」
「よかろうなかなか面白い縁になりそうだ!」
妖神様にのり暫くするとそこそこの大きさの町の公園にたどり着いた。
季節は冬に近いせいか人通りは少なく縁の糸のつながかった陽太と思しきベンチに座る青年の後ろ姿が見える
「あの人みたいだ」
「じゃあ! さっくと殺してくる!」
黒いオーラをまとう狂気をにじませる満面の笑顔に思わずひきつる俺は妖神様に。
「もしものときはたのむぞ」
「任せておけヨウタとやらにすでに小僧に気付かれないように結界を張った。まあ杞憂だがな」
「なんだよそれ人の命がかかっているなんだぞ!」
「まあ見ておれそれで分かる」
「ヨウタ!」
「その声は――」
「じゃあ! ヨウタさような――!?」
巨大化した鋭い爪の生えた黒い禍々しい振り上げたヤマカミの右手が止まる。
「その声ヤマカミ君か! 全く声が変わっていないね! 十年近くたつのに――」
「その目は?」
「驚かせたね。実は君と別れた次の日山に登ろうとしたら運悪く落ちてきた木の枝が両目に刺さってね。そのあとたまたま通りかかった人に助けられてね。禁足地とか言う場所だって散々怒られたよ……これは山の神様の祟りだってね。そのあと治療のために引っ越したけど結局目は治らず君に会いに行きたくても禁足地に一緒に行ってくれる人もいなくてね。本当にごめんヤマカミ君あの日いけなくて……でもやっと出会えたんだ! 昔と同じく話でもしよう目が見えないから前と同じように遊べないけど話くらいできるからね。後はいヤマカミ君の大好きなポテトチップスのりうま塩味! いつか渡せるよういつも新しいのを持ち歩いていたんだげとやっと渡せたよ!」
「僕たちは友達なのか……」
「うん当たり前だよ! 君は僕の一番の友達だよ!」
『僕はヨウタを恨んでいたのに……ヨウタは僕をずっと友達と……』
「どうしたの食べないの?」
『僕が山の管理を怠っていたせいでヨウタの両目が……』
「ああ……美味しい……ヨウタ……涙が出るほどに……」
ポテトチップスを食べるヤマカミの目から大粒の涙があふれ出す。
そして体にまとう黒いオーラが消えていく。
『僕は友達失格だ……僕はヨウタを信じ続けられなかった……僕の憎悪はヨウタが大好きだっから気持ちの裏返しだったんだ……こんな最高の友達を僕は……』
「それは良かった積もる話はたくさんある何から話そうか――」
「すまない……ヨウタ……お別れだ……ヨウタは僕を忘れて幸せになって……」
『最高の友達にできる最大の償いは僕が君の――になること』
「どういうことだい? ヤマカミ君」
「さようなら……僕の最高の友達……ありがとう縁屋……僕は最高の友達を手にかけるところだった……僕の最高の友達ずっと僕たちは友達だよ――」
「そんなのあたりまえだよ! ヤマ――あれ? 僕はだれと話してあれ!? 見えないはずの両目が見える!? なんでだろう涙が止まらない……とても悲しいことがあった気がする……」
それからしばらく陽太の目からとめどなく涙はあふれだした――
ヤマカミは彼の目となることを選んだのだ――
ずっと信じ続けてくれた最高の友達に報いるために――
その涙はきっとヤマカミの歓喜の涙――
陽太を憎み殺そうとした自分を最後まで信じてくれた最高の友達への――
ヤマカミは幸せだったのだろうか――?
それはもちろん――
最後に最高の友達を得てそんな結末にはきっとならない――
ヤマカミは生き続けるその記憶が消えても最高の友と共に――
「これからヤマカミはどうなるんだ?」
「この状況の場合天界で輪廻が妥当だろうな。どうせ神の特権を使い人子に転生するだろうよ」
「あああの神の権利の願いをかなえてもらえるとか言う。今回のケースで適応されるのか?」
「されるだろうなヨウタとやらと出会うまで長年山の管理はしていたようだし後は縁加点がつくからな」
「縁加点ってなんだよ?」
「簡単に言えば話や絵になる最後を遂げることだ神は寿命が長い分死に際にこだわるからな。老衰で死ぬより話や絵になる最後を遂げることを美徳としている」
「そうかヤマカミは生まれ変わるのかきっと最高の友にもう一度会い再び友達になるために」
「そうかもしれんな」
「それにしても惨事にならなくてよかったよ」
「心配し過ぎた縁屋の結べる縁は鑑賞にふさわしくない縁はできるだけ自動で避けられる意図的に繋げないならあのえんことだ」
「ならいいが」
きっと生まれ変わってもヤマカミと陽太は最高の友達にきっとなれる――
どのような形になるかは俺にはわからないけど――
きっと年や関係が違っても最高の友になれる――
二人はお互い見認め合った最高の友達――
だって二人はずっと友達なのだから――
裏話014
ヤマカミが管理していた山は邪気が頼まりやすい危険な神の領域といわける禁足地という人がみだりに入ってはいけない場所
ヤマカミの役割の一つは特定の人物特別な日以外で踏み入る人間に罰を与えること
しかしヤマカミは孤独でろくな話相手のいない山の管理に嫌気がさしていた
そんなとき踏み入った陽太に友達になろうといわれて二つ返事で了承した
ヤマカミは山から下りられないため山のふもと近くで二人は多いに遊んだ
そのせいでヤマカミは山の管理を怠たり山に邪気がたまり山の自然に悪意が芽生え山を登ろうとした陽太の目に意図的に刺さり失明し
たまたまま通りかかった禁足地のことを知る人物に助けられ治療のため引っ越してしまう
それから十年いくら待っても現れない陽太を憎みヤマカミは山の邪気をすべて自分に集め悪神になり山を下り陽太を殺そうとしているところで今回の話につながる
陽太があれ以来現れなかった理由が自分であると気づいて陽太の気持ちを知り浄化されたヤマカミは自分と引き換えに陽太の目となることを選択する
自分がいなくなっても悲しまないように自分の記憶をすべて消して
ヤマカミは本来の名ではないが長い間呼ばれることもなくいつしか本来の名は忘れてしまった
それから数年後陽太は結婚して第一子の男の子をもうけた
その子供とはなぜかとても馬が合いまるで親子というより最高の友達のような関係が片方が亡くなるまで続いた
その子供が何から転生したかは語るのも野暮である
次回予告
縁その?? 愛という願い
ある日フリーマーケットで本物願いをかなえる魔人の入った魔法のランプを手に入れる縁屋
そして現れた魔人は何故一つか自分に願いをかなえてもらわず死んだのかしれたいといわれ協力する縁屋
そして明かされる男の本心に
魔人は命を捨ててまで自らの切なき願いをかなえようとするが
魔人が最後にかなえたとてもとてもやさしい願いとは?
二人の愛という願いの果ては君たちのその目で見届けてほしい
そして二人の結末はいかに相も変わらずの濃厚なドラマが君たちを待っている
君の君たちの心へ感動を――
ただそれだけだ――
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