時の狭間にいる私
@akiniaitai
第1話
私は街角を歩いていた。すると、突然、目の前の反対側の角に、自分とまったく同じ姿をした誰かが立っているのを見た。彼は私に向かって微笑んでいた。
最初は幻覚だと思った。もしくは、自分とよく似た服装をした通りすがりの人かと思った。しかし、彼が手を上げて、ゆっくりと古びた広告看板の方を指し示したとき、それが単なる偶然ではないと気づいた。彼の動きはどれも明確で滑らかで、どこか馴染み深く不気味な感覚があった。
私は顔を上げて看板を見た。そこには数字が点滅していて、分単位で精確に表示されていた。それはまさに今日の日付と時間だった。思わず腕時計を確認すると、針がちょうど看板に示された時間と一致していた。
その瞬間、私は「彼」と通りを挟んで視線を交わした。周囲は人々が行き交い、騒がしく忙しない中、彼の姿はなぜかはっきりと見えた。彼が微かに口を動かしたが、声は聞こえなかった。ただ、唇の動きだけははっきりと読めた。
「君はここに属していない。」
私は立ち尽くした。周りはクラクションや通行人の話し声で騒然としていたが、彼は静かにそこに立って、ただ私を見ていた。まるでその警告は私だけに向けられているかのように。「ここに属していない」とはどういう意味なのか?「ここ」とは一体何なのか?
心臓が急に早鐘を打ち始め、頭の中が一瞬で混乱に包まれた。どうしてもう一人の「私」がいるのか?彼は何を言おうとしているのか?私はどこに属していないのか?彼は一体何者で、どこから来たのか?
驚愕しながらも、私は彼に近づいて真相を聞きたいと思い、一歩を踏み出した。しかし、その瞬間、彼はくるりと振り向き、隣の細い路地へと消えていった。暗い影の中にその姿はあっという間に見えなくなった。
不安が急にこみ上げてきて、私はすぐに追いかけた。足早に、ほとんど小走りで人混みをかき分け、その路地へと駆け込んだ。路地は深く、光も薄暗く、湿っぽい空気が漂っていた。私は周りを見渡し、もう一人の「私」の姿を探そうとしたが、彼はどこにも見当たらなかった。
さらに進もうとした瞬間、視界が急にぼやけ始めた。地面が揺れ出し、周囲の建物の輪郭が歪み、まるで街全体が崩れていくようだった。色鮮やかな絵の具がぐるぐると回って混ざり合うように、世界がねじれていくのを感じた。頭がくらくらし、何か無形の力に引きずり込まれるような感覚に襲われた。
次の瞬間、身体の重心が急に崩れ、暗闇の中へと落ちていった。意識を失う直前、さっきの「私」の顔が頭に浮かんだ――その顔には言い表せないほどの哀れみの色が浮かんでいた。
目を開けたとき、私は冷たい床に横たわっていた。頭上の天井は青白い光を放っており、四方の壁は金属の光沢を帯びていた。空気には消毒液のような冷たく刺すような匂いが漂い、私は思わず眉をひそめた。
体を支えて何とか座り上がり、周囲を見渡した。この空間は異様なまでに静まり返っていた。すべてが冷たい光に包まれており、自分の呼吸音さえ異様に大きく感じられた。
「番号45、身元確認中。」上方から冷たい機械の声が聞こえた。その声には一切の感情がなかった。
時の狭間にいる私 @akiniaitai
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