第32話 雪だるま作ろう
■フィオレラ村
「そこは一面の雪景色だった……か、これは真っ白だな」
「まっしろー!」
「これを雪かきするっていっていたけど、マスター大丈夫なの?」
雪が落ち着いたところで、宿舎の外に出てみれば村一面真っ白になっている。
畑も、家も白くなっていて、村人達はクワやスキを使って雪を退かしていた。
余り降らないとはいえ、雪の経験がある人がいるので動き出しは早い。
子供たちはドリーと同じように珍しい雪に大はしゃぎだ。
「せめて道くらいは開けておかないとな……せっかくの雪だから廃屋とかに固めて保存庫にするか」
空を見上げれば晴れた太陽が覗いているので、少し暖かい。
ドリーが元気なのは、そこもあるようだ。
ボスボスと新雪を踏んで穴をあけて楽しんでいる。
「雪も有効活用されるのですね」
「ああ、氷室だな。俺の祖父が昔はこういうのを使っていたというのを聞いていたんだ」
フロスティアは空中に浮かびながら、俺の横顔を覗いてきた。
精霊というのは何でもありだなと思うが、まずは道などの確保からである。
「道の雪を退かしたいから、ドリーとシーナで雪だるまを作ってくれ」
「わかった! ドリー、雪だるま作るー!」
雪玉を転がして道の雪を集めて大きなものへと変えていった。
大きくなるとドリーだけでは転がらないので、シーナも手伝ってなかなか大きな雪だるまが出来上がっていく。
「かまくらを作るには雪が少ないのが残念だな……」
「パパ―! 危ないー!」
ドリーの叫び声に振り向くと、俺の背丈よりも大きくなった雪玉が転がってくる。
「意外と楽しいわね! ほらほら、マスター。運動不足っていっていたから、ちょっとは走りましょうよ」
「おい、シーナ! だからってこれはないだろっ!」
俺は映画でよく見るトラップの岩玉のように迫ってくる雪玉から、逃げ始める。
姿は見えないがシーナの楽しそうな声と、いつの間にか雪玉から逃げる俺を応援するドリーをはじめとする子供たちの姿が見えた。
「応援されたら、やめるにやめられないじゃないかっ! くそっ! 村の道をこのままならしていくぞ!」
「わかったわ、ほらほら走った走った!」
俺はシーナに追い立てられながらも村の端から端まで雪玉で地面をならしていくのだった。
◇ ◇ ◇
「も、もう走れん……」
「キヨシ様。大丈夫ですか?」
息を切らして倒れこんでいる俺の顔をホリィが覗き込んできている。
カッコ悪いところを見られてバツが悪いが、走りすぎて疲れたので体を起こすのがやっとだった。
「農作業をしているから、筋力ついていたと思ったが……上手くいかないものだ」
「落ち着いたらお風呂でゆっくりしてくださいね」
「ああ、あれはデカイな……」
「シーナさんがすごくがんばったので、かなり目立つ雪だるまになりましたね」
俺の視線の先には10mくらはあろうかという巨大な雪だるまが立っている。
おかげで村の雪はかなりなくなっていたので、結果オーライという奴だ。
「それで、ホリィは俺に何かようがあったのか?」
「そうです! 村長さんが一足早い年越し祭りをしようということで広場に来てほしいと」
「祭りの準備か……もうちょっと休んだら行くよ」
「それでしたら、私の膝をお貸し、しますよ……」
俺が休んでからというと、ホリィは顔を赤くしながらも雪の無くなった地面に座り膝をポンポンと叩く。
照れ臭くはあったものの、疲れていた俺はお言葉に甘えることとした。
これも結果オーライという奴だろうか……。
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
精霊とキャッキャウフフしつつもホリィともちょっといちゃついちゃいました。
展開についてはインスピレーションでかくので、予定は予定と思ってください。
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