第31話 幼女たちは雪遊びしたい 

■フィオレラ村 教会 司祭宿舎


「うぅー、さびぃぃぃぃぃーっ!」


 雪が降り積もる中、俺はフロスティアを背負い、寒くて動けないというドリーを抱っこして運ぶという腰にクルことを無事やってのけた。

 アラフォーのおっさんにはいくら軽いとはいえ幼女二人を抱えて動くのはキツイ。

 さらに雪が降ってきて寒いのだから、そのつらさは筆舌ひつぜつにしがたい。


「キヨシ様、雪が急に降ってきましたので心配しておりました。暖炉の前に行ってくださいな」


 そういってホリィは防寒用のマントと温かいハーブティを入れてくれた。

 冷たい手にあったかい飲み物はありがたい。

 ドリーとフロスティアを床に寝かせてから飲み物を受け取り、一口飲み体内に熱が戻ってきてからホリィへ経緯を話した。


「フロスティアなのですね。雪の精霊として語り継がれていますが、私も見るのは初めてです。というよりも、ここ数年で瘴気が世界に広がっていますので、出会うことすらかなわないことの方が多いとは思っていました。キヨシ様と一緒ですと嘘の様ですね」

「エミルにモテモテだとからかわれたよ。幼女趣味はないんだがな……」


 俺が頭をガシガシかいているとホリィは少し声を弾ませて話をつづけた。


「山の方に普段は住んでいると聞いていますし、山の方へ返しにいくのが適切だと思います」

「そうなるよな……お、目覚めるぞ」


 俺とホリィが話していると、フロスティアのまぶたが震え、ゆっくりと目を開けた。

 薄水色の髪とおそろいの澄んだ水色の瞳をしている。


「ここはフィオレラ村ですの?」

「ああ、そうだ。俺の名はキヨシ。彼女はこの村のシスターで知恵者のホリィだ」

「わたくしはフローラと言いますわ。助けていただきありがとうですわ」


 ペコリと丁寧にお辞儀をする幼女に対して、俺もホリィもお辞儀をし返した。

 物腰がやわらかいというか、丁寧な精霊だと思う。


「わたくしはここを見おろせるあの山から来まして、その……最近すごく楽しそうな空気と清らかな土地だったので、遊びに来てしまいました」


 恥ずかしそうに俯き、フローラは目を閉じて再びお辞儀をした。

 隣の芝生は青いというが、賑わっている世界が近くにあると行きたくなる気持ちは俺もわからなくはない。


「でも、それならどうして工房長屋の前に倒れていたんだ?」

「お恥ずかしながら、飛んできた際に瘴気の影響で力を吸われたためにお腹もすいてしまって、匂いにつられて近づいたのですがそこで倒れてしまったのですわ」


 そこまでフローラがいうとくきゅぅと小さな腹の虫が鳴る。


「ひゃぅ!? 恥ずかしいですっ!」

「恥ずかしがることはない。もっとわがままを言うべきだぞ? ホリィ、スープを……って、何を食べるんだ?」

「わたくしは普通の人が食べるものをいただきますわ」

「それは良かった。ホリィのスープは美味いから、ゆっくり味わっていくといい。あとはこの雪なんだが、フローラが来たせいか?」


 俺が外をみるとしんしんと雪が降り続けていた。

 少し降るのが収まった気はするが結構、積もり始めている。

 

「そうですわね。わたくしの吸われた力の一端がここの雪を作っていますわね。わたくしも目覚めましたし、もう少しで落ち着くはずですわ」

「それなら、雪遊びができそうだな」


 俺の一言に幼女たちが目の色を変えて俺を見上げてくる。

 その中には寒くて動けないといっていて、ドリーの姿だってあった。

 

「雪遊び! 魅惑的な響きですわね」

「へぇ、雪を使って遊ぶなんてあたしはやったことないから興味あるわ」

「ドリーも! ドリーも遊ぶの!」


 温まったら村の子供たちも誘って雪かきついでに雪遊びをしようとなる。

 はしゃぐ子供たちを前に、俺も少しワクワクしてきた。

 雪を見るとなんでこうなるんだろうな?


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【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


雪を見るとちょっと嬉しくなるのってなんでしょうね?

まぁ、会社に行く前となるとすごくゲンナリしますが、車通勤だとなおさらっ!

幼女精霊達とキャッキャウフフが次からはじまりますので、お楽しみに!



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