閑話 とあるシスターの懺悔物語(コンフェッション)
■フィオレラ村 教会 懺悔室
星がたくさん輝く夜に二つの月が浮かぶ。
その月の光が教会の窓から差し込んでくると静かな礼拝堂は荘厳な空気をかもしだしていた。
礼拝堂の一画にある懺悔室に扉には【入室中】の看板が立てかけられていて、そこにはシスターでるホリィがいる。
懺悔室の聞く側ではなく、話す側の席にだ。
「司祭様がいたときには、こうして聞いていただけたのですが……今は私しかいませんので、私が一人で話します」
ポツポツとホリィは話を始める。
カーテンの先には人はいないが、そこに存在があるように話すのは神に対して祈りを捧げるのと同じだ。
「もう一月くらい前になりますね。早いものです、司祭様がお亡くなりになって、キヨシ様が来てから……」
ホリィが告げるのはキヨシが教会に来てからの話である。
一人で教会を切り盛りするのが大変であり、身も、心も疲れてきた時に来たのがキヨシだった。
「見慣れない服を着ていた人でしたが、銀髪の女神セナレア様の話を聞いたとき、嬉しかったです」
少しばかりホリィは頬を染めて笑う。
ホリィはこの村に外から来た人であり、生まれは街で本に囲まれた生活をしていた。
特に好きなのは伝承や神話などでそれが高じて、シスターになったのである。
「辺境の村が瘴気に侵されていると聞き、困っているだろうと司祭様に連れてこられた時は少し困りましたが、今では感謝しています、キヨシ様と出会えたのですから……」
懺悔というよりかは昔話に近い感じだ。
今は亡き司祭に向けて、近況報告をしているのである。
「キヨシ様が来ていただけたお陰で村に活気が戻りました。懺悔室でツライ話をしてくる村人が減り、子供たちに笑顔が戻っています」
最近は本当に村全体が明るくなった。
キヨシの湯とされる樽風呂の利用者も多く、ホリィは人のいない朝にキヨシにお湯を沸かして貰って入るのが日課になっている。
井戸水で身を清めるのは冬場つらかったので、助かっているのは本当の話だ。
「でも、最近は困ったことがあります」
ホリィは真剣にカーテンの奥を見る。
そこには人の気配はないが、司祭がいるように思えていた。
「私……キヨシ様の事を好きになって来てるのです。伴侶の話がでたとき、取り乱して盛り上がってしまいました。あの方は女神セナレア様の使徒であるというのに……」
ホリィの顔がトマトのように赤くなって俯いてしまう。
「ドリーさんというドリアードに新しくシーナさんというディーナ・シーという二つの精霊を養女に迎えているので、なんだか家族のようなんです。司祭様と一緒に過ごした時よりも楽しく、嬉しい日々を過ごしています」
自分の中に湧きあがっているものを言葉にしているが、ホリィの心は落ち着かなかった。
「司祭様、私はどうするのがいいのでしょうか? 愛をささやき夫婦となってもいいのでしょうか? シスターでなければ、ただの村娘であれば悩まなかったのかもしれません……けど、シスターとして学んできたことがキヨシ様の役になっていることもあるのです」
ハァァァァァと大きなため息をホリィはつく。
今日はここまでとホリィは懺悔を打ち切った。
「また、お話を聞いてください。私がどうするかは私が決めることですけれど、気持ちを整理するのにここは向いていますから……」
この村に来てから、何度も司祭へお世話になった懺悔室を後にする。
明日からはまた元気な姿でキヨシと話そう、美味しいご飯を作って彼の喜ぶ姿をみたいから……。
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
ホリィ視点の話を一回書きたいと思ったので書かせていただきました。
恋と立場に揺れるのって甘酸っぱくていいですよね!
こういう恋愛をされたいと思う今日この頃です。
次からは新章スタートです。
第三の幼女精霊を出そうと思いますので、お楽しみに!
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