第23話 森が生きている

■フィオレラ村 名もなき森


 フィオレラ村は山間に出来た村で、山の実りと川の実りを得ている。

 ただ、実りが多いということは人間以外の動物にも狙われるということだ。


「俺のいたところでは鹿だけでなく、猿やタヌキもいたな」

「エイプはこの辺にはいねぇなぁ。いたらもっと早く村が襲われてらぁ。ああ、山の方にはゴブリンがいるって聞いてるから近づくんじゃねぇぞ、キヨシ様」

「ゴンじぃに従うよ」


 この辺に詳しいゴンじぃが先頭で、俺とシーナが続く。

 最後尾にはゴンじぃの息子がついて来てくれていた。

 息子といっても俺よりも年上で、名前はガロという。


「親父。本当に森が復活してきているんだな」

「おうよ、このキヨシ様のお陰だ。おめぇも感謝しろよ」

「キヨシ様、今後とも村のことお願いします」

「だから、俺はただのおっさんだ……」

「謙遜も過ぎると嫌味になるわよ、マスター」


 シーナにたしなめられ、俺もそろそろ認めなければいけないのかもしれない。

 聖者様というのはさすがに言い過ぎだとは思うがな。


「足跡がある。このあたりに来たのは確かだが……でけぇな」

「俺の足の半分くらいの足跡って……相当でかくないか? この人数じゃ、やばくないか?」

「これくらいなら大丈夫よ。あたしがすぐに倒してみせるわ」

「シーナが言ってもなぁ……不安だ」

「マスター、それはなんなのよ!?」


 ぶーぶーとシーナが文句をいいはじめる。

 お嬢様のような見た目をしているシーナだが、時折年齢らしい子供っぽい雰囲気をするのが可愛いと思った。


「まぁ、キヨシ様がいうように俺らはお嬢ちゃんの実力を見たことないからなぁ。信じろって方が無理だろぉ」

「う……確かにそうね。なら、見せてあげるわ……私の力を!」


 そういうとシーナは巨大な両手剣を召喚して、構える。

 重さに沿った下段の構えというのだろうか、切っ先を後ろの地面に向ける構えだ。


「せぇぇぇいっ!」


 シーナが森の中にある巨木へ向かって走る。

 両手剣の射程圏内に入ったとき、シーナが自分の身の丈ほどもある両手剣を軽々を振り上げた。

 走った加速も乗った鋭い剣閃が走り、風がおこる。

 ビュンと音が風に遅れて聞こえて来たかと思うと、巨木がググググという音と共に倒れた。


「すごいな……」

「ふん、当然でしょ!」

「こらたまげたがぁ……道が塞がっちまったから、回り道しねぇといけねぇなぁ」

「なっ!」


 ゴンじぃが困ったかのようにいうとシーナの顔がみるみる赤くなっていく。

 そして、ズズズズと地面に沈んでいった。


『もう、鹿がでるまで、あたし地上にでていかないっ!』


 穴があったら入りたいっていうのを地で行くやつを初めて見た瞬間である。

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