閑話 セリアの決意
■街道
「なぁ、リカード」
「どないしたん?」
行商のための馬車に揺られているとき、思いつめた様子のセリアがリカードに話し始めてきた。
今朝がたフィオレラ村を出発して、見えなくなってから話しだすタイミングに深い意図が見える。
「あのキヨシという男はなんだろうな?」
「悪い奴には見えへんけど……正体が知られたらトラブルの元になりそうやなぁ。世間知らずっぽいとこあるし」
「そうだな。あの村にいるから何事もないが精霊と親しくなれること、瘴気を浄化できることなどは神の御業と言われたって信じてしまう」
「せやなぁ……それにあのキヨシはんの発想は新しいものやから、そこからも厄介事になりそうやなぁ」
二人の間に少しの沈黙が訪れる。
「リカード」
「ええで」
「まだ、私は何も言っていないぞ?」
「奴隷契約の解除やろ? 今のままじゃ逃走防止の魔法がかかっていてワイと離れられへんからなぁ」
セリアはリカードがさらっと答えたことに驚くも、目を細めて微笑んだ。
そして、決意に満ちた目をリカードに向けて言葉を紡ぐ。
「本来やりたかったエルフの里の復興をあの村の近くでやりたい。あの場所は私達が守るべき場所だ」
「さよか、ちいっとばかし寂しくなるなぁ」
「ちょっとだけなのか?」
「ワイは商売人や、感傷に浸る趣味はあらへんのや。儲かることが第一やからな」
ひょうひょうとした表情を崩すことなくリカードは告げ、馬に鞭を打った。
(すまない、お前には感謝しているが……私は私の一族を守ることが第一なんだ)
セリアはそう思いながら、馬車の中に戻りこれからの計画を練りはじめる。
エルフの里を再び作り上げるため壮大な計画を……。
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
今回は短めですがセリアについて、ちょっと書きたかったので閑話で書かせていただきました。
ハーレムヒロインにはならないですが、重要な役回りになるポジションのキャラとして活躍させていきたいですね。
明日からは新章突入です。
1万字くらいの章を今後もつなげていく連作短編形式でやっていきますので、よろしくお願いいたします。
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