第20話 家族というもの
■フィオレラ村 教会
騒がしいシーナを連れて、俺達は教会へと戻ってきた。
もう教会というよりかは俺の家の様な気がしてきている。
立った数日しか過ごしていないんだが、いろいろあったおかげで愛着がわいていた。
「あら、キヨシ様。おかえりなさいませ、そちらの女の子は?」
「あたしはディーナ・シーのシーナよ。マスターの剣よ」
「ディーナ・シー! また新たな精霊を仲間にされて……キヨシ様は伝承の使者様で間違いないでしょうね」
「俺はそんなにすごい奴じゃないんだがな……」
ホリィの出迎えを受けた俺はこそばゆい気持ちを味わう。
農家を継げず、初恋の人を兄に奪われて逃げた派遣社員として生きて来た俺がここではもてはやされている。
素直に喜べないのは三十路も過ぎて偏屈になっているからだ。
「パパはすごいよー」
「ええ、自信を持つといいわ」
俺の手を引っ張るドリーに偉そうに鼻を鳴らすシーナ。
娘が二人できたみたいで、なんだか嬉しくなってきた。
あとは嫁なんだが……。
「なんや、そうしているとあんたら家族みたいやなぁ」
「こら、リカード。無粋なことをいうな。私も思っていたが言わなかったんだぞ」
俺らの様子をみていたリカードがボソリとつぶやくとセリアが肘でリカードを小突いていた。
「そそそそ、そんな!? キヨシ様はもう神様のようなものなので、私ごときが伴侶になるなどっ!?」
ホリィが顔を真っ赤にしてリカードの言葉に過剰に反応する。
この反応は完全に脈がないわけではないが、さすがに一回り近く下のホリィを嫁に貰うのは
「まぁ、夕飯にしないか? シーナは何を食べるんだ?」
「精霊は人間のようにものを食べたりしないわ。しいていうならばマスターの水が欲しいわね」
「ドリーと一緒か、でも食卓には一緒にいようか。食べる食べないはおいておいて、【家族】なら一緒に食卓を囲むものだ」
俺の言葉にみんなが笑う。
何かと思っていたら、俺が【家族】と無意識のうちに言ってたからだ。
「そうか、俺はホリィやドリーたちを家族と認めていたんだな……」
結婚とかそういう形式的なことではなく、気持ちとして受け入れているのであれば俺はこの家族のために頑張ろうと思う。
家族は大切にするものだと祖父もよく言っていた。
「なら、今日は家族記念日ってことで肉と酒をだすわ。外で宴会しよか」
「リカードがただ飲みたいだけだろ、肉も保存期間が切れそうだから……」
「無粋なのはどっちや!」
ハハハと俺は心の底から笑う。
随分と笑ってなかったが、今日からはもっと笑えそうだ。
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