第18話 沼地の怪物
■死滅した森
森の奥へ進んでいくと、空気が悪くなっていることに気づく。
木々も黒ずんでおり、足元の土だって乾いた感じだ。
環境汚染の末に死滅した森という言葉がしっくりくる光景である。
「ドリー、大丈夫か?」
「パパ、気持ち悪い……」
綺麗な環境を好む精霊の一種であるドリーにはこの汚れた環境は毒のようだ。
俺は少し悩んだあと、ドリーをおんぶした。
ドリーの体から
体の防衛本能なのか、俺がやろうとしたことをやってくれた。
なぜかはわからないが、俺の思考の一部がドリーと繋がっているようなのだ。
「今、水をかけてやるから少しの間は我慢しろよ」
「パパ、ありがとぅ……ドリーはダメな子で、ごめんなさぃ……」
〈浄水〉を頭の上からかけてやると、瘴気にあてられ、しおれていた頭の花が少しばかり元気になる。
「瘴気ってのはどうにもやっかいなもののようだな……早くなんとかしなきゃ、村までまた瘴気が広がったら畑もダメになる!」
俺は叫びをあげて走った。
「キャァァァァ!?」
前方からセリアの悲鳴があがる。
より急がないと、リカードに合わせる顔がなかった。
黒ずんでいる木々を抜けて走ると、目の前が開け、汚れた沼とヘドロの様なものに取り込まれようとされているセリアの姿が見える。
「どうしたら……俺の水が浄化のできる水ならば……迷っている場合じゃない!」
俺は両手を組み、子供の頃、風呂場で水をかけていた水鉄砲の形を作った。
俺が今、名付けたスキルの名前を唱えて水を出すとビシューと勢いよく水が飛び出し、セリアを覆っていたヘドロを洗い流す。
高圧洗浄機で掃除しているくらい綺麗に取れて気持ち良かった。
「これならいける!」
「ぐぼぁぁぁぁぁぁ!」
俺が勝利の一手を手に入れたことで確信を持っていると、黒いヘドロにまみれた怪物がセリアから俺の方を向いて襲い掛かってくる。
なんだろうな、確か甥っ子が遊んでいたゲームにこんな奴がいた。
「ベトベトな体をしているなら、気持ち悪いだろ! 今から綺麗にしてやるからな!」
〈浄水〉をヘドロの怪物にぶっかけていくと、ドロドロの体が剥げていきだんだんと小さくなってくる。
「本当に高圧洗浄機で掃除している気分だな」
「んぅ……キヨシ! 強い怪物がいる! 早く逃げ……」
「怪物ってコイツのことか?」
起き上がったセリアが血相を変えて俺を逃がそうとしていたが、俺は首を振ってちょいちょいと指をさした。
そこには怪物ではなく、騎士の様な鎧を着ているツインドリルというのか、グルグルと巻かれた髪を2つ頭の両サイドにぶら下げた幼女がバタンキューと寝転がっている。
「キヨシ……お前って強いんだな?」
「俺はただ、洗浄してただけなんだがな……」
感心した顔をしているセリアに対して、俺の答えはちぐはぐな気がした。
だけど、これが事実なんだよなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます