第17話 きれいな森に戻すために
■フィオレラ村周辺の森
翌朝、村のすぐ近くにある山から広がっている森へと俺たちは足を踏み入れていた。
メンバーは俺、ドリー、セリア、リカードの4名と村の狩人が2名の6名である。
「俺の故郷の森に近い感じだな……知らない植物ばかりだが……」
杉のようなそうでないような不思議な葉っぱの生えているものを触りながら俺がつぶやくと、狩人の二人とセリアが顔を突き合わせて話していた。
「この森がここまで回復するなんて……キノコも生えるようになっているぞ!」
「森が生き返ってきているというわけなんだな? やはり原因は……」
「それしかあるめぇ。やっぱりキヨシ様々じゃ」
三人の視線が俺に向く。
「俺、何かやったのか?」
実感がないことを言われてもわからない。
きょとんとしている俺のズボンの裾をドリーが引っ張ってきた。
「パパ、パパのお水の力がね。広がっているの! 土を通して広がっているの!」
俺がドリーのほうを向くと両手を広げて空中で円を描き、アピールをする。
なるほど、毎日の水まきで<浄水>を使っているし、風呂で使った水も終わったら地面に撒いたりしていた。
そのため、土の中から浄化とでもいうモノが起きているのはわかる気がした。
「その影響で自然が戻っているということか……森にきてわざわざ水撒きをして浄化するなんて手間をしなくていいのは楽だな」
「せやないねん! これはとんでもないことをキヨシはんはやっているんやで?」
ケロっと何でもないように俺は言ったが、それを聞いたリカードからツッコミが入る。
とんでもないことと言われても俺は毎日をやりたかった農業をしているだけだ。
「このまま森が復活していけば、森の恵みが多くえられて村がより豊かになるぞい」
「餌が増えれば、獣も増えるがその分、狩人である俺たちの出番もでてくるってもんだ」
狩人の二人がキノコを採って盛り上がっている中、セリアは太い幹の木を触って見上げて感慨深く語る。
「いいところだな……この森は本当にいい森になりそうだ」
だが、そのひと時も一瞬で終わった。
黒い靄のようなものが森の奥から広がってきて、周囲の木が腐り始める。
「瘴気だ! 発生源がこの奥にあるということか!?」
セリアが弓を構えて、一人先に進んだ。
森の木々の合間を軽い身のこなしで駆け出していく姿は焦るようであり、真剣そのものである。
「あいつ……悪いけど、キヨシはん、セリアのこと頼んだで?」
「追いかけていくしかないか……瘴気を浄化できるのは俺の<浄水>だけなんだもんな。ドリーはどうする?」
「ドリーもパパといくー!」
元気な返事を受けた俺はドリーとともに森の奥へ消えていったセリアの後を急いで追いかけるのだった。
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