第15話 いい湯だな
フィオレラ村の夜は早い。
いや、昔の日本の田舎だって夜は早かっただろう。
日も沈めば村人は仕事を終えて家に帰って家族との団らんや、内職をはじめるのだ。
「はぁ……生き返る……」
「パパ! しんじゃやーなの!」
「大丈夫だ、大丈夫だから泣くな……」
樽風呂に入りながら、俺がぼやいた一言で一緒に入っているドリーがわめき始めた。
まだまだ子供だからニュアンスが伝わらないのは仕方ないか。
幼女と風呂に入るなんて、昔実家で親戚が集まった時、姪っ子に付き合わされたぶりだ。
あの経験があるので、ドリー相手でも親子ごっこができる。
「そっちの湯加減はどうだ?」
「はい~、とっても気持ちいいですね。朝に軽くお湯で体を洗うくらいでしたが湯舟に入る気持ちよさは別格です」
ホリィのとろけたような声が返ってくる。
俺のいる樽風呂の隣には同じ樽風呂があり、男女別々に入って声を掛け合えるようになっていた。
リカードの発案であり、もちろん目隠しようにテントも立っている。
「さて、風呂も入れるようになったしな……リカードの手伝いを何かしたいが……何があるんだろう」
「そうですね、いつもならすぐに帰ってしまわれるのですが、今夜は泊まられるので何かほかに目的があるのかもしれませんね」
「わかった、あとで詳しく話をしてみる。あ、肉の調達というか害獣対策を考えないといけないか」
湯船につかるとアイデアが浮かぶといったのは誰だったか……。
その言葉の通りに俺の頭にはいろいろなことが浮かんでくる。
芋を育てたりしてくるなら、畑を襲うイノシシやシカなどの対策をしなければいけなくなるはずだ。
「イノシシやシカがいるなら、ジビエにしたいな」
「じびえー?」
「肉だ、肉。ドリーは肉を食べないんだったな」
「うん、ドリーはお日様とパパのお水があれば大丈夫」
「本当に植物なんだな……食費がかからなくていいんだが」
美味しいものを食べて、お風呂にゆっくりする。
理想的なスローライフのために俺は俺のできることをしていきたいと気持ちを新たにした。
「それではお先にあがりますね。寝る前に女神セナレア様へゴウェモンブーロができたことを報告いたしたいですし」
「ああ、お疲れ様。先に寝るなら、お休みな。ホリィ」
「はい、お休みなさいま……きゃっ!」
そのとき、ぶわぁっと大きな風が吹いて目隠しの布がめくれた。
俺はその隙間から月夜に照らされるホリィの白い裸を見てしまう。
大きな胸を手で押さえていたが隠しきれていないところまでしっかりとだ。
「み、みましたか?」
「なんも……見てないぞ」
俺は静かにそう言って湯船につかり直した。
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