第11話 ふつふつと沸き立つ野望

■フィオレラ村 村長の家


「じーちゃん、ただいまー!」

「遅くなった」

「おお、キヨシ様。村のものから小麦畑が戻ったと喜びの声を聞いております。なんとお礼を言えばよいのか」


 村長の家に着いたときには日も落ちており、ドリーは植物の成長をさせることに力を使いすぎたのか眠ってしまっていた。

 荷車の上で寝かせていたが、さすがにそのまま外においてはおけないので俺はドリーを抱っこして村長の家に運んでいる。

 今日一番の功労者だ。

 起きたらたっぷり甘やかしてやりたい。


「すっかり父親だな……」

「どうかされましたので?」


 不思議そうに俺を見てくる村長に首を振って「なんでもない」と告げた。


「じーちゃん! これ、キヨシ様が荒畑で作ったやつなんだけど。美味しい食べ方があるんだって」

「ほぅ、確か村のタイラーが食べて腹を壊した奴じゃな。根っこなんぞ食べるからと思っておったんじゃが……」

「ジャガイモをちゃんと食べないなんて人生損してるぞ。これはいろんな使い方ができて、荒畑でも育てるのが楽で便利なんだ」


 俺は祖父から教わった知識で、祖父のような村長に伝える。

 教わる側から教える側へ、植物が種を作り後世へとつなげるように大切なものをつなげたいと思っていた。


「そうなんですのぉ……キヨシ様は村の救世主様じゃ。ありがたや、ありがたや」

「キヨシ様、ドリーちゃんを奥で寝かせようよ。そのままじゃ、ジャーガイモを食べられないよ」

「そうだな、ちょっと村長寝室を少し借りるぞ」


 ピーターにそういわれて俺はドリーを寝かせにいき、戻ってきたら次はキッチンへと向かう。

 面倒だったので鍋に〈浄水〉で水を注ぎ、火をつけて湯を沸かした。

 沸騰するまでの時間で、ナイフでジャガイモの目をとっていく。


「キヨシ様は刃物の使い方も上手だねぇ、なんでもできる人なんてとってもすごいよ」

「俺なんか……いや、ありがとう。このジャガイモの目をとれば腹痛なんかおこさないんだ」


 包丁ではないものの、趣味がソロキャンプだったこともあり、ナイフの扱いはお手のものだ。

 火起こしもすぐにできたので、人間いつどこで何が役に立つかはわからない。

 そうこうしているうちに鍋が沸騰したのでジャガイモを入れていって湯でた。

 

「バターとかはないから塩と胡椒だな。酪農して乳製品を作りたい……」


 俺はぶつぶつと言いながら、この村で快適な生活をするために自分の野望を抱き始める。

 どうせならば、村人も楽しく笑顔となるような村にしていきたいと思い始めていたのだった。

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