第10話 ジャガイモとったどー
■フィオレラ村 荒畑
ドリーが頑張ってくれたおかげで、荒畑の一画に成長した花から種が出て、作付け範囲が増えていった。
一本の花から、ちょっとした畑まで成長できるのは農家として一家に一人ドリアードが欲しくなる。
「ドリーがいてくれて嬉しいぞ」
俺はドリーの頭をぐりぐりと撫でてから、収穫に向かった。
畑の上の方は問題なさそうだが、果たして根っこの部分、実がどうなっているのかが気になるところである。
「鍬とかが欲しいが、まずは手でいいか」
「パパー、ドリーが掘り起こすよ?」
「違うんだ、ドリー。こういうのはな、自分でやってこそ意味があるんだ」
自分で育てたわけではないが、初めての収穫くらいは時間がかかっても自分の手でやる。
それが作物への礼儀だと祖父がよく言っていた。
育ってくれたことへの感謝を忘れずにいることは、日本の【いただきます】の精神だと思う。
「土がそれほど固いわけでもないからな、汚れても水は出せるから気にならない」
「おいらもやるよ!」
俺が掘り進めているのを見ていたピーターが一緒に育った他のものを土を掘り起こしはじめた。
そして、掘り起こして取り出したらなかなかの大きさの
「成功だ! ジャガイモができたぞ! これを半分に切って、埋めていけば増やしていけるぞ。荒畑はこれでしばらく耐えきれるな」
「キヨシ様、それは村の奴が食べて腹壊したから食べないようにしているんだ」
「それは芽をとってないだけだ。ちゃんと調理すれば、美味いぞ~。小麦だけじゃない村の名産にもなるかもな」
急いで育てるにはドリーの力が必要だが、小麦の方を急成長させて合間に芋を育てればバランスよくできるはずだ。
「ええ~、本当かな~」
「ぶー、パパは嘘言わないよー!」
「ごめん! ドリーちゃん、おいらが間違っていたからっ!?」
ピーターが俺を怪しんだら、ドリーに怒られたので頭を下げている。
なんだか、尻に敷かれそうなやつだ。
今から将来が不安になる。
「今夜は俺がこいつを使った料理を何か作ってやろう。見本があればみんな育ててくれるだろうからな」
「それは楽しみだぜ! ようし、収穫がんばるぞ」
俺とピーターは育ったジャガイモを掘り起こしていった。
その後、お供えものと一緒に運び出すにも大変になってきたのでピーターに荷車を頼む。
気づけば日も傾いており、夕方になろうとしていた。
「体を動かして一日過ぎるのは工場でも一緒だが、充実感が違うなぁ……」
俺は日本で働いていたことが、遥か昔のことの様に思い始める。
それだけ、この世界が充実しているのだ。
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