♣︎玉森翠葉の現況レポートその3。


「どう?私をここから出す方法、見つかった?」


玉森翠葉は柳田に対し、威圧的な目で見つめ、質問する。

十九時間ぶりに再び玉森翠葉のいる面会室にやってきた柳田は、少し引き攣った顔で話す。


「正直言って、裁判もまだできていない状態で、計画的かつ残虐な行為での殺害事件、反省の色を見せていないと思われている今の時点で、君を一日で釈放するなんて事は、現実的には出来るわけがないし、この俺も罪に問われる事を指す。」


「じゃあ、今ここであなたを殺し、死後の世界で死神の采配を下されればいいわ。運が良かったら転生してもらえるけど、大体は保留と消滅よ。いい?」


「待て。結論を出す前に一度だけ質問していいか?」


「その前に待って。」


「何だ?」


玉森翠葉は立ち上がった途端、


「だって私、死神だから。」


と、天井を見上げながら呟いた。


「何を言ってる?」


「何でもないわ。続けて。」


「調子狂うな…。君は死後の世界から来たのか?」


「そうなるわね。」


「君はどうしてまたこの世へ戻って来れたんだ?君は、その、転生したという事か?」


「それは言えないわ。」


「じゃあ言い方を変える。君は再び死後の世界へ戻れるのか?」


「戻れるけど、間違いなく消滅の選択をされる。禁じ手を使ってここへ来たから。だから、私の人生は本当に残り一回きり。死んだら終わりね。」


「…、どうして白嶺刹李を殺そうとこの世へ禁じ手を使ってでも戻ってきたんだ?」


「質問は一度と、あなた言ったはずよね…?」


「ん…。すまない。がめついてしまったな。」


柳田はスッと立ち上がる。


「結論だ。君に会わせたい人がいる。その人と話し、もし心変わりがなければ、俺を殺せ。俺には、君をここから出す手段を持ってないからな。」


「いやに強気ね。」


「家族を守る為だからな。」


柳田はガチャリとドアを開けた。

開かれたドアの奥からゆっくり歩いて玉森翠葉の前にやってきたのは、全身黒い服に染まった一人の女性だった。


「あなたは…!」


玉森翠葉は驚愕の表情を見せる。


「では、俺は席を外しますので。」


柳田はドアをゆっくり閉め、部屋を後にした。

女性はさっきまで柳田が座っていたパイプ椅子に腰掛け、玉森翠葉と目を合わせる。


「久しぶりね…、翠葉ちゃん。」


玉森翠葉の前に現れたのは、喪服を着た白嶺刹李の母親だった。

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