壹幕:破。
第十三話 このヘタレ野郎…。
『緊急速報をお伝えします。現在、全国で相次ぐ連続爆発事件が深刻な状況を迎えています。これまでに10件の爆発が確認され、犠牲者は20名にのぼっております。事件には共通点がいくつか浮かび上がっており、爆発が起こるのは決まって昼と夜の食事時、そして現場には毎回、男女二人の遺体が残されています。年齢層は十代後半から四十代前半が多く、さらに爆発に使われたとみられる破片や装置が一切発見されていない、極めて異例の事件となっています。
政府は事態の重大さを重く受け止め、緊急対策本部を設置し、各機関と連携しながら全力で捜査を進めておりますが、犯人像も犯行の動機も明らかになっておらず、危機は依然として続いております。特に、食事時という日常の時間帯での発生が続いていることから、多くの皆さまにとっても身近で不安を抱かせる事態となっていることは避けられません。
皆さまには、食事時に人の集まる場所での行動に一層の注意を払っていただき、不審な状況や物を見かけた場合には、決して触れず、ただちに親衛隊に通報するようお願い申し上げます。繰り返しになりますが、現在、私たちはまだ犯人の手がかりをつかめておらず、犯行が再び起こる可能性が否定できない状況です。
国民の安全を最優先に、政府は全力で事態の収束を図っております。新たな情報が入り次第、皆さまにお伝えいたしますので、引き続き冷静な行動を心がけ、周囲の安全確保に努めてください。』
テレビでは、どのチャンネルもこの事件で持ちきりになった。
全国連続爆発テロ事件と呼ばれ、有名な待ち合わせ場所等の公共の場所や、食事施設への警備の強化、また封鎖や制限もかけられ、外出自粛要請もかけられた。
政府や親衛隊に対する不信感も大きく肥大し、この事件はモモバースが出来てから最も死者数が出た事件となった。
残酷だが、10件もの事件が発生しているのに、未だ爆発の原理や条件がわかっていない状態だ。
だけど、僕ら親衛隊は何となく勘づいていた。
こんな芸当が出来るのは、パンペルシェラの能力ぐらいだと。
最も疑うべきなのは、親衛隊以外にパンペルシェラを持つ紫傘五人衆と呼ばれる反社会組織だ。
「はあ…。」
ため息が、無意識に喉から現れては、口から出る。
そんな状態になって、もう四日が過ぎた。
夜は大体、居酒屋のカウンターでテレビを見ながら呑んで、日を越すようになった。
せっかく働いて稼いだ少量の金も、もう尽きようとしていた。
「何なんだよこれ…。」
あれから何度漏れた言葉だろうか…。
「何で…、死んだのにまた死ななきゃならなかったんだ…。」
僕は、ルリアさんの葬式には出れなかった。
合わせる顔なんて見当たらず、葬式にも出れず、僕は今日も酒を啜り、テレビを見上げてまたため息をつく毎日にしか逃げられない自分にうんざりする。
「このヘタレ野郎…。」
声に出し、自分に言い聞かせた。
そうしてしばらく呑んでいると、店員が僕の席の脇を通った。
「お待たせしました。モツ煮です。」
モツ煮?
頼んでないのになあ。
間違いを指摘するのもめんどくさくなり、無言でいたその時だった。
バシャン!!!
突然、モツ煮を顔面に浴びせられた。
「うわ!あっつ!!なんで!?」
「このヘタレ野郎!!」
バン!!
次は空になったモツ煮の皿を机に勢いよく置かれ、更にモツ煮の汁が僕の服に飛び散る。
「何してんのっ!?」
僕はその店員の顔を拝んだ瞬間に、血の気が引いた。
「招集。ヘキザさんから。」
僕の隣に立っていたのは、店員ではなくメロちゃんだった。
メロちゃんの目は、まるで復讐に燃える青い炎のように静かに僕を見つめていた。
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