第3話 東京空襲


 フクシマの原潜から発射された2本の巡航ミサイルRGMブロックV――通称“トマホーク”は山を越え河を渡り、六本木ヒルズにぶっささった。



 DOOOOOOOOMN!!



 トマホークの搭載量は通常火薬で454kgである。しかし爆発はしなかった。搭載されていたのは火薬ではなく人間であったからだ。


 ヒルズの屋上に金色の長髪のおとこが降り立った。


「もうちょっとこうさぁ、やさしい乗り物ってないわけ?」


 逆方向に曲がったヒジをもどしながらCDは文句を言った。


「オレむかしはさ、ヘリコとか使ってたわけよ。撮影用だけど。そういうのないもんかね」


「CDさん100万枚売りミリオンセラーだったから自家用ジェットとか持っていなかったんですか」


「ないないないない」


 ガスマスクから解放された口がKAKUKAKU動いた。


「印税ってそんなに多くないんだぜ。使い切るのもあっちゅう間。じゃなかったらあぁんな肉体労働なんてしてなかったって」


「夢がないですね」


 部下のひとりがつまらなさそうに言った。


「夢はこれから見ようぜ。準備いいか?」


 CDの問いかけに、10人の部下たちはふりむいて背中を見せた。背負ったリュックにはPANPANに銀円盤が詰め込まれていた。


 かつては人を楽しませ、いのちを救うこともあったそれらは、デジタル音源に移行しきった今はもうただのゴミだった。


 カウントダウンが使わなければ。


「バラ撒けっ! カウントダウン、スタートゥ!!」


 高さ238mから銀盤が落とされた。それは蝶のように舞い、地面で爆発する。



「ご安全にな!」



 CDは白いヘルメットをかぶり直した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る