第6話 竜騎士、王国の現状を知る






「我らに代わり民を救ってくれたこと、心より感謝する」



 村長宅で女騎士が深々と頭を下げる。


 真っ赤な髪色と瞳の美女は名をヘカテリーナと名乗った。

 全身を騎士甲冑に身を包んだ姿はどことなく威厳を感じさせる。



「礼は不要です。我々とて食料の確保という利があったからこそ動いたのですから」


「……そうか。そう言ってもらえると助かる」


「ん。労働は人間の義務。たまたま手が空いていただけのこと。気にしなくていい」



 マキナが何故か得意気な顔をする。



「ところで、一つお訊きしたいのですが」


「何でしょう?」


「その鎧、ドラグレイア王国のものですね?」


「「「「……」」」」



 いきなりの問いに俺たちは黙り込む。


 と、ここでテレシアがニコニコ笑顔を浮かべてヘカテリーナさんに向かって言った。



「えー? なんのことか分かんないな☆」


「失礼。決して咎めようと思ってお訊きしたのではありません。何らかの事情があるのでしょう。しかし、他国の人間である以上、ましてや世界中に宣戦布告した国の出身者であれば疑わねばならないのが我々の仕事で――」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 今、なんて言った!?」



 俺はさらっとヘカテリーナさんが言った内容に思わず耳を疑った。



「ドラグレイアが世界中に宣戦布告した!? あの王は馬鹿なのか!?」


「い、いえ、しかし、これは紛れもない事実です。実際、すでに周囲の国を見たこともない兵器で攻撃しているとか。我が国は幸い距離があるので、すぐ攻めてくることはないと思いますが……」



 有り得ない。


 古代魔法帝国の遺物兵器は魔石がないと動かすことはできないはずだ。


 そのために竜を連れて脱走したのだから。



「……どう思う?」


「ん。竜以外から魔石を集めたとか?」


「んー、具体的にどれくらい魔石が必要なのか知らないから何とも言えないね」


「そ、それよりも今は無実の証明です!! 世界中に宣戦布告されてしまった今、私たちはどこに行っても追われかねませんよ!?」



 さて、どうしたものか。


 しばらく四人で色々と話し合っていると、ヘカテリーナさんが割って入ってきた。



「あー、その、申し訳ありませんが、一度皆様を首都にお連れしたいのですが」


「ん。それは逮捕?」


「い、いえ!! あくまでも事情聴取です。今まで平和主義であったドラグレイアで何が起こったのか、それを知りたいのです」


「ん。国家権力の犬に言われても信用できない」


「あはは、あたしらもちょっぴり前まで国家権力の犬だったけどね☆」


「たしかに状況が状況ですので疑われるのも仕方ないでしょう。しかし、我が国は義を重んじる国、決して無礼な真似は致しません!!」



 断言するヘカテリーナさん。



「エルデウス殿、どうしましょうか」


「……首都に行くしかないだろう。俺たちが亡命した身であることを説明する。いざとなったら自力で脱走しよう」


「ん。了解」



 こうして俺たちはレイドス公国の首都へ向かうことになった。


 一方その頃。














 竜騎士たちが立ち去ったドラグレイア王国。


 その王都は普通ならば賑わいを見せ、人々の活気で溢れているはずだった。


 しかし、今は物音一つしない。


 そもそも首都であるはずの街には人の気配が感じられなかった。


 まるで廃墟のような雰囲気に包まれているドラグレイア王国の王都でただ一人、王城で高笑いする者がいる。



「ははは、ふはははははっ!!!! やはり余は正しかった!! この力があれば、余は世界の王となる!! やはり竜騎士など要らぬ!! 竜の魔石も最早不要!!」


「……お父様……」


「おお、我が娘よ。待っていろ、もう少しで世界は余のものとなるのだ!! ふはははははははははははッ!!!!」



 過去の遺物に囚われてしまった王には、最早娘の言葉すら届かない……。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「人とは強大な力を持てば理性を失う獣なのだよ」


エ「きゅ、急にどしたん?」



「面白い」「竜騎士も国家権力の犬やろ」「あとがきで笑った」と思った方は、感想、ブックマーク、☆評価、レビューをよろしくお願いします。

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