第22話 怖い
「ねぇ、りゅりゅ。怖かったのは分かるけれども」
「がるっ!がるっ!」
「うまうまは悪気があった訳じゃなくてね」
「がるっ!がるっ!」
「とにかく、仲良くしようよ。ね?」
「がるっ!がるっ!がるっ!がるっ!」
「どうしよう。りゅりゅがうまうまを許してくれない」
誤解である事は伝わっているはずである。だが、りゅりゅはうまうまを許そうとせず、駄々をこねて首を振っていた。
「ほら、りゅりゅ。もう一度うまうまを見てごらん。ごめんねって顔をしているよ」
「がるっ!がるっ!がるっ!がるっ!」
「駄目だ。完全に駄々っ子になっちゃった。どうしよう?」
ぶんぶんと首を振るりゅりゅを見ながら、りんりんは考える。どうすれば仲直りをしてもらえるのか。どうすれば話を聞いてくれるのか。
「がるっ!がるっ!がるっ!がるっ!」
やがて、一つの作戦を思いつき、りんりんはりゅりゅに話しかけた。
「ねぇ、りゅりゅ。どうしてもうまうまと仲直りをしてくれないの?」
「がるっ!がるっ!がるっ!がるっ!」
「分かった。それなら私もりゅりゅを嫌いになっちゃうからね」
「がるっ!がるっ!がるっ!がるっ!……がる?」
困惑するりゅりゅを地面に置いて、りんりんは立ち上がる。
「バイバイ。りゅりゅ」
「がる!?がる!?」
「私はりゅりゅの事が嫌いになったの。ついて来ないでね」
「がる!?がる!?」
「バイバイ。りゅりゅ」
そう言ってりんりんはりゅりゅを置いて歩き出す。数メートル歩いてから振り返ると、今にも泣きそうな顔をしてりゅりゅがついて来ていた。しゃがんで目線を近づけて、りんりんはりゅりゅに話しかけた。
「りゅりゅ、もう一度言うよ」
「がる」
「私はりゅりゅの事が嫌いになったの。ついて来ないでね」
バイバイ、とりんりんが更に言うと、とうとうりゅりゅは大声で泣き出した。
「がるー!!がるー!!」
「りゅりゅ、私に嫌われて悲しい?」
「がる!!」
勿論!!と言う様にりゅりゅが頷いた。それを見て、りんりんは優しく微笑んだ。
「りゅりゅに嫌われて、うまうまも同じ気持ちだと思うよ」
「がる?」
「あのね、りゅりゅの事が嫌いになったのは嘘だよ。嘘をついてごめんね」
「がる?」
「りゅりゅもうまうまに、嫌いになったのは嘘だよ、って言おうよ?ね?」
りんりんはりゅりゅを優しく撫でながら、仲直りの提案をした。涙目のりゅりゅが頷き、うまうまの方を向く。
「ヒヒン」
にっこりと微笑みながらうまうまがりゅりゅに近づく。
「が…がる…」
「どうしたの?緊張しているの?」
りんりんはりゅりゅが震えている事に気がついた。うまうまが近づく程、その震えは大きくなっていた。
そして、うまうまがりゅりゅの目の前まで来たその時、りゅりゅはなんとうまうまから走って逃げだしてしまった。
「がるー!!」
「え、ええ!?どうしたの!?」
「がるー!!がるー!!」
りんりんがりゅりゅを追いかけて抱き抱えた。よく見ると、りゅりゅは泣いていた。
「がるー!!がるー!!」
「落ち着いて、りゅりゅ。もしかして、うまうまが怖いの?」
「がる!」
「そうかあ。そうだよね。怖い目に遭ったばかりだし、まだ怖いよね」
震えるりゅりゅを撫でながら、りんりんは考える。二人に仲直りをして欲しい。だが、それは自分の都合であり、りゅりゅの気持ちを考える事を失念していた。りゅりゅもりんりんに嫌われたフリをされて、うまうまと仲直りをしたいとは思っただろう。だが、りゅりゅはうまうまがまだ怖い。今の状態で無理に仲直りをしても、りゅりゅに負担を強いる事になる。
「きちんとうまうまが怖くないって事をりゅりゅに分かってもらってから仲直りしてもらうのが良さそうだね。でもどうやって分かってもらおうかな?」
「どう?問題は解決した?」
「あ、ミコちゃん。まだ解決してないね」
悩むりんりんの元に、少し離れた場所から見ていたミコが近づいて来て尋ねた。うまうまがりゅりゅを噛んだ事から始まった一連の流れをりんりんが説明すると、ミコは面倒臭そうな顔をした。
「何とかして、りゅりゅとうまうまに仲良くなって欲しいのだけれども、どうすれば良いかな?」
「運営に報告したら良いかもしれないわよ。その方法は取らないつもりかしら?」
「わしわしの時と同じで、その方法は取りたくないね。外部の力で無理やり仲良くさせるのではなくて、自然に仲良くなって欲しい」
「で、それを実現させる為の作戦は?」
「全く思いつかない。ねぇ、一緒に考えてくれないかな?」
「レベル上げをしたいから、それをやりながらでならば良いわよ」
「分かった。レベル上げを手伝うから、一緒に頑張って考えようね」
りんりんとミコが歩き出し、りゅりゅ以外のプロモン達が後に続いた。りんりんに抱っこされているりゅりゅを、少し距離を取ってりんりんの後を歩くうまうまが心配そうに見つめていたが、二匹の視線が合う事は林フィールドに着くまで一度も無かった。
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