第20話  プロモンのプロモを撮ろう!

 ダイオウイカ型プロモンを倒した次の日、いつものホテルの一室で、りんりんはミコと話していた。




「危なかったわね。かめかめが急成長していなかったら大変だったわよ」


「そうだね。でも、かめかめの泳ぎも上手くなったし、私も助かったし、仲間のプロモンも増えたし、終わり良ければ総て良しだよ!」


「あれだけのピンチの後にそう言えるとは、逞しいわね。それにしても、プロモンの急成長って何が原因で起こるのかしらね。最近、急成長したプロモンについての記述や動画がネット上に増えてきたから、それらを見てグシオンと試しているのだけれども」


「けれども?」




 はあ、とため息をついてからミコが続きを話し出した。




「ちっとも上手くいかない。どうやら、そのプロモン自身かプレイヤーか或いはその両方がピンチの時に急成長する事が多いみたいなのだけれども、そうじゃない場合もあったし、よく分からないわ」


「そうじゃない場合って、例えば?」


「この間一緒に見た、プレイヤーとプロモンが音楽に合わせて踊っている時にプロモンが急成長した動画もその一つよ。あの後に全力で真似したのだけれども、これも上手くいかなかったわ。誰か急成長の原因を早く突き止めて、教えてくれないかしらね」




 完璧に再現出来たと思うのに、とミコは呟いた。




「あれ?ミコちゃん、グシオンと一緒にあのダンスを踊ったの?」


「ええ。でも、見せないわよ」


「えー!?何で!?絶対に可愛いよ!見たい!見せて!」


「恥ずかしいから見せないわ。ネットにある元の動画を見なさい。そういえば動画と言えば、昨日から動画を撮るイベントが始まったわね」


「プロモンのプロモを撮ろう!の事だね!面白いイベントだと思うよ!」




 プロモンのプロモを撮ろう!というイベントは、その名の通り仲間のプロモンのプロモを撮り、指定の動画サイトにアップロードするイベントである。再生回数や高評価数に応じてポイントがつき、そのポイントの多さを競うイベントであった。




「参加賞のプロモンの卵も魅力的だけど、どうせ撮るならば上位二十パーセント以上に入って、賞金も欲しいわよね」


「だよねー。賞金百万ゴールドは欲しいよ。私は四人とも撮るけど、一番見た目が良いうまうまが上位二十パーセント入りの頼みの綱かな。やっぱり、芸とか格好良いスキルをさせた方がポイントが伸びるのかな?」


「え?ねぇ、りんりん」


「何?」


「もしかして、他の人の動画って見ていない?」




 確認を取るように、ミコがりんりんに尋ねた。




「まさか!昨日の夜、参考にする為に何本か見たよ」


「どんな動画があったか覚えている?」


「格好良い柄の鯉型プロモンが力強く泳ぐ動画とか、オウム型のプロモンが歌を歌う動画とかがあったね。そのプロモンならではの魅力を引き出していて、良い動画ばっかりだったよ」


「なるほど。で、今日はイベントの動画を検索した?」


「してないよ」


「やっぱり。上位二十パーセントを狙う発言にしてはおかしいと思ったのよ。考えが甘いと言うか、純粋な感じがしたわ」


「え?どういう事?」


「今、プロモンのプロモ、で動画を検索してみれば分かると思うわ。プロモンのプロモと言うよりも、このイベントで上位二十パーセントに入る為の動画ばかりになっているわよ」




 上位二十パーセントに入る為の動画とはどういう物なのか。気になったりんりんはプロモンのプロモで動画を検索した。




 その検索結果には、水着を着てタコやイカやクラゲ型プロモンに絡まれている女プレイヤーが写ったサムネイルの動画がずらりと並んでいた。




「あー、上位二十パーセントに入る為の動画ってこういう物ね。よく分かったよ」


「ええ。そういう物よ」




 上位二十パーセントに入る為の動画とはどういう物か、りんりんは一瞬で理解した。確かに再生回数は稼げそうだし、高評価も多くつけて貰えるだろう。このイベントでの上位二十パーセントぐらいには簡単に入れそうである。しかも撮影する時に特別な技術が必要ない。




「ねぇ、ミコちゃん。一つ聞いていい?」


「何?」


「ミコちゃんもこんな動画を撮った?」


「まだ」


「まだ、と言う事はこれから撮るって事だよね?恥ずかしくないの?」


「全然平気よ。現実の姿じゃないし」




 グシオンとダンスするのを見せるのは恥ずかしいけれども、水着姿を見せるのは恥ずかしくない。その感覚はりんりんにはよく分からなかった。




「ところで、りんりん。ちょっと気になったのだけれども」


「何?」


「プロモンのプロモで検索する時、タコ、イカ、クラゲ、水着を含む動画を除外したらどうなると思う?」


「それは私も気になるね。やってみようか」




 タコやクラゲはともかく、イカ型プロモンを見るのは、昨日ダイオウイカ型プロモンに怖い目に遭わされたばかりの身には少し辛かった為、画面を変える目的も兼ねて、ミコに言われた通りにして再度プロモンのプロモでりんりんは検索した。




「どう?どんな動画が出てきた?」




 ミコの問いかけにりんりんは答えた。




「ウサギ型プロモンとバニーガールの服装の女性プレイヤーが写ったサムネイルの動画」

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