第15話  水着

「すごーい!!とってもいい景色!!」




 りんりん達は海フィールドに遊びに来ていた。雲一つない青い空とサンゴ礁が見えるほど透き通った海を見て、思わずりんりんは声をあげた。




「早速水着に着替えて、っと」




 メニュー画面を開いて操作をすると、一瞬りんりんの体が光に包まれて、りんりんの格好が赤色のフリルが付いたビキニに切り替わる。




「それにしてもミコちゃんはいいなあ。私と違って身長も高いし、凹凸もしっかりしてるし」


「ワン?」


「何でもない。私には私に似合う水着があるものね!さて、まずは記念撮影をしよう!」




 サンゴ礁が良く見える位置にりんりん達は集まり、写真を撮る。素晴らしい写真が撮れて、りんりんは大満足だった。




「うん!みんな可愛いし完璧!」


「ピィピィ」


「そうだね。それじゃあお弁当に、ってああ!!」




 りんりんは砂浜をみて突然叫んだ。そこには三匹の足跡とりんりんの履いているサンダルの靴跡が残っていた。




「これ!これ可愛い!ちょっと待って!私もサンダル脱いで歩くからみんなもその辺りを歩いて!四種類の足跡が写った写真を撮りたい!」


「ピィー」




 それより早くお弁当にしようぜ。わしわしがそう言う様に一声鳴いた。






「ピィ!ピィ!」


「美味しい?」


「ピィ!!」


「ふふふ。良かった。沢山食べてね」




 写真撮影から十五分後。りんりんとわしわしは砂浜の上に敷いたレジャーシートの上でお弁当を食べていた。甘い卵焼きを味わいながら、りんりんはわしわしを見る。急成長してもわしわしの食欲は相変わらずで、よく食べていた。




「ピィ」


「骨はこの皿に置いてね」


「ピィ」




 骨付き肉から出てきた骨をわしわしが皿の上に置く。急成長する前のわしわしならば、皿の上に置かないどころか、りんりんに投げつけていた可能性すらある。




「成長したねえ。嬉しいよ」




 しみじみとりんりんは呟いてから、りんりんはいぬいぬとうまうまの方を向いた。二匹はお弁当よりも遊ぶ事の方が楽しみだったらしく、浅瀬で追いかけっこをしていた。




「二人とも!あんまり遠くに行かないでね!」


「ワン!」


「ヒヒーン!」




 貸し切りのごとく他のプレイヤーがいない海フィールドを、りんりん達は楽しんでいた。




「ワン!ワンワン!」


「ヒヒーン!」


「可愛いなあ。そうだ。これも写真に撮っておこう」




 いぬいぬとうまうまの追いかけっこを撮影しようとおもったりんりんはメニュー画面を開き、カメラを起動する。




「さてさて、動いているけれども、ぶれずに撮れるかな?って、あれ?追いかけっこ止めちゃったの?」




 二匹は立ち止まって遠くを見ていた。飽きちゃったのかな?とりんりんが呟くと、二匹がりんりんの元にやってきた。




「ワン!ワンワン!」


「ヒヒーン!」


「どうしたの?二人とも?」




 ただ甘えに来たにしては二匹の様子はおかしかった。いぬいぬはりんりんの傍でうろうろと歩き、うまうまはりんりんの髪を噛んで引っ張っていた。




「もしかして、一緒に来て欲しいの?」


「ワン!」


「ヒヒーン!」


「分かったよ。でも、そんなにアピールしなくてもちゃんと遊んであげるから大丈夫だよ。わしわし、お留守番よろしくね。あんまり遠くに行くことになったらついてきて貰うけれどね」


「ピィー」




 面倒くさそうにわしわしが鳴いたのを聞いてから、いぬいぬとうまうまと遊んであげようとりんりんは立ち上がった。ボロドウ団や、ボロドウ団と似た様な事をするプレイヤーがまた現れては困るので、りんりんから見える位置に全員いる事を原則のルールとした為、わしわしが見える位置で遊ぼうとりんりんは考えていた。




「ワン。ワンワンワン」


「ピィ?」


「ワン!」


「ピィ」


「あれ?わしわしも来るの?」




 まだまだわしわしはお弁当を食べ続けると思っていた為、食べる事を中断したわしわしに、りんりんは驚いた。だが、わしわしがせっかく食べ物以外に興味を持ったのだ。暖かく迎え入れて一緒に遊ぼう。そう考えて、りんりんはカメラを停止させる。




「よし、それじゃあ全員で遊ぼうか!何で遊ぶ?色々買ってきたんだよ」




 とりあえずビーチボールを出すからね、とりんりんが言おうとしたその時、りんりんの体が宙に浮いた。




「え?」


「ピィーー!!」


「ええええ!?わしわし、どうしたの!?」




 わしわしがりんりんを掴んで低空飛行を始めたのだ。いぬいぬとうまうまも何も言わずに走ってついてきた。百メートル少々進んだところで、りんりんはわしわしから解放されて砂浜に降り立った。




「び、びっくりしたあ。どうしたの?」


「ピィ」




 あれを見ろ、と言う様にわしわしが一声鳴いて顎で示した先を見ると、浅瀬で水しぶきがあがっていた。




「アレ?アレが気になるの?」


「ピィ」


「ワン」


「ブルル」


「分かった。行ってくるね」




 その水しぶきが何なのかりんりんには全く分からなかったが、いぬいぬとうまうまはともかく、食事中だったわしわしが興味を持った水しぶきである。きっとこれは凄い水しぶきなのだろうとりんりんは予想していた。




「ひょっとして、とても珍しくて美味しい食べ物が手に入ったりするのかな?それだったらわしわしが私を大急ぎでここに運んだ理由も分かるね。さて、何が出てくるかな?」




 水しぶきにりんりんは両手を入れた。ひんやりとした水の感触の先に何か硬いものを感じて、りんりんはそれを掴んだ。




「水しぶきの正体はこれか!って、え?」




 ざばりと音を立ててりんりんはそれを水の中から取り出した。それは、カメ型プロモンだった。


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