第9話 ゲスト
「あ、お肉焼けてる」
「ねぇ、ミコちゃん」
「次はトウモロコシを焼こうかしら」
「ねぇ、ミコちゃん」
「さぁ!まだまだ食べるわよ!」
「ねぇ、ミコちゃんってば!本当にあの子どうするの!?」
「知らない!もう三十分も私達を見てるプロモンなんて知らない!」
「ピィー!!」
ワシ型プロモンが現れてから三十分が経過していた。始めは空中を旋回していたが、飛び続けるのが面倒になったのか、現在はバリアに触れないギリギリの位置に立ってりんりん達を眺めていた。
「三十分も狙われるような事はしてないはずなのだけど」
「最初にいぬいぬとグシオンが威嚇したけど、それ以外何もしていないからね」
「威嚇したのが良くなかったとしても、何でプロモン達じゃなくて私達をずっと見ているのかしらね」
「本当、何でなんだろうね。あ、コップ空になっちゃった。おかわり取ってくるけど何かいる?」
「コーラ頂戴」
「おっけー」
ミコからコップを受け取って飲み物を取りに行く。コンロから三メートル程移動して自分用のオレンジジュースとミコの注文したコーラをそれぞれのコップに注いで、さて戻ろうと振り返る。
「ん?」
視界にワシ型プロモンが映る。その時、りんりんは違和感を覚えた。
「ねぇ、ミコちゃん」
「何?」
「あのワシ型プロモンって、”私達”を見ているんだよね?」
「多分そう。グシオン達の方もちらちら見てはいるけど、あれは攻撃が飛んでこないか警戒しているだけで、基本的に私達二人を見てるっぽい」
「そのはずだよね?ちょっとこっちに来てくれない?」
どうしたの?と言いながらミコが飲み物置き場に歩いてくる。近づいてきたミコをすぐ傍に立たせて、りんりんはワシ型プロモンの方を見る。
「あ、そういうことか!」
「何?何か分かったの?」
「あの子、私達の方を見てない。コンロを見てる」
「え!?コンロを!?」
「さっきここからミコちゃんとあの子を見たのだけど、視線がちょっとずれてるように思ったんだよね」
「それで私を呼んで、視線の先が私達じゃなくてコンロだって確認したのね」
「うん。今思えば私達ここ三十分くらい、全然コンロから離れず調理し続けていたからね」
「分からないわけだわ。プロモン達でも私達でもなくコンロを見ていただなんて」
ピィーとワシ型プロモンが鳴く。よく見るとその口からはよだれが垂れていた。
「もしかしたら飛ぶのを止めてあそこにいるのも、風下があっち側だからなのかも」
「どういう意味?」
「食材が焼ける匂いを嗅ごうとしているんだと思う」
「え、ということは、アイツあんなにカッコイイ見た目なのに食いしん坊キャラなの?」
「そう考えると結構可愛いかも?さてと、それじゃあ行こうかな」
「行こうかなって、どこに?」
「まあ見てて」
メニューを開き、インベントリからお皿を取り出しながらりんりんはコンロに近づいていく。
「何食べるんだろう?やっぱりお肉かな?」
焼きあがった肉をいくつか皿に乗せて、りんりんはワシ型プロモンに近づいていく。コンロの方を見ていたワシ型プロモンも、近づいてくるりんりんに気づいて視線を向けた。
「はい、どうぞ」
「ピィ?」
焼きあがった肉を乗せた皿を、ワシ型プロモンの前にりんりんは置いた。
「食べていいよ」
「ピィ!!ピィー!!」
りんりんの言った言葉を理解したのだろう。ワシ型プロモンは皿ごと食べる勢いで食べ始めた。
「お腹すいていたんだね。よしよし」
「ピィ!!」
「よく噛んで食べてね。っていっても鳥だから歯はないのかな?」
「ピィピィ」
「あ、もう食べ終わっちゃたの?おかわり食べる?」
「ピィー!!」
ちょっと待っててね、と声をかけて皿を回収し、コンロに歩いてくるりんりんの傍に近寄って、ミコは声をかける。
「ええっと、アイツ、食いしん坊キャラだったの?」
「そうみたい。で、ミコちゃん。というかみんな。お願いがあるんだけど、いい?」
「何?」
「プロモン避けの杭、抜いていい?あの子と一緒にバーベキュー楽しみたい」
「正気!?アイツはこの草原フィールドのヌシよ!?暴れられたら一瞬で四匹とも倒されるわよ!?」
「うん。でもたぶんあの子、危害を加える気はなさそうだし。いぬいぬ達も良いよね?」
傍観していたプロモン達四匹に声をかける。すると四匹は向き合って何かを話し合い始め、それが終わるといぬいぬが一匹でワシ型プロモンに近づいていった。
「ワン」
「ピィ」
「ワンワン」
「ピィ」
「ワンワン。ワン」
「ピィピィ」
「ワン!」
話し合いは終わったらしい。いぬいぬがりんりんの傍に行き、服の袖を引っ張って杭の方へと連れて行こうとした。他の三匹もりんりんの方を向いていた。
「ということで、良いよね?」
「ワン?」
「あーもう、分かった。いいわよ。でもグシオン達が攻撃されたらすぐに杭を打ちなおしなさいよね」
「ありがとう!いぬいぬ達もありがとうね!」
すぐに杭の方へと歩いていき、地面から抜き取った。バリアが消え、ワシ型プロモンがりんりんの方へと歩いてくる。
「ピィ」
「あはは、お礼なんていいよ。一緒に食べよう。何が食べたい?やっぱりお肉?」
「ピィ!!」
「分かった。今から焼くから待っててね」
「ピィー!!」
こうして、ゲストが一匹増えてバーベキューは続いていった。ワシ型プロモンも、ミコが心配していたように暴れて他の四匹のプロモンを傷つけることもなく、バーベキューを楽しんでいた。
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