第6話 vsゴーレム
「うわぁ!すっごい賑やかだねぇ!」
「ワン」
「ヒヒーン」
うまうまが仲間になってから一週間後。新しいイベントが開催され、りんりんは仲間のプロモン達と共にその会場へと訪れていた。
イベントの内容は単純。二匹のプロモンを連れて一本道を進み、ゴールまでたどり着くだけ。ただしその道中で五回の戦闘があり、また、ゴールまでにかかった時間に応じて賞品が変わるため、
「共闘いかがっスかー!!十万ゴールドくれれば最高賞品ゲットっスよー!!」
「うちはもう二十回も五分以内のクリアに導いたよ!!実績あるよ!!」
「共闘十万!!フレンドになってくれるなら半額!!」
このように、腕に自信のあるプレイヤーが共闘の権利を売り出しており、会場は賑やかであった。
多くのプレイヤーは最高の賞品を手に入れられる五分以内のクリアを売り出しているが、中には「エレブレドラ猿出せます」や「皇帝散歩タコ募」と書かれた看板を持っている、特に商売をしているわけではなさそうな謎のプレイヤーもいた。
あれって何なんだろうね、と話しながらりんりん達はイベントの受付にたどり着いた。共闘の営業は何度も受けたが、りんりんは全て断っていた。
理由はただ一つ。ミコと競争の約束をしたからだ。その競争をするにあたって、他プレイヤーの力は借りないというルールを決めていたため、共闘の営業は全て断ったのだ。
「それじゃ、二人とも!ミコちゃん達に勝って美味しいバーベキューを食べさせてもらおう!」
「ワン!」
「ヒヒーン!」
別に負けてもりんりんが負担するだけなのでバーベキューは食べられる。しかし、せっかくなら勝ちたい。美味しいお肉とお野菜を夢に見ながら、りんりん達はイベントに挑戦した。
「うまうま!【いななき】!」
「ヒヒーン!!!」
うまうまの声に驚いた野生のコウモリ型プロモン達が羽ばたくのを止めて落ちてくる。
このスキル、【いななき】はボロドウ団のプロモン達の動きを止めたものであり、今回のイベントでも大活躍していた。耐性の無いプロモンはこれを喰らうと必ず動きが止まるため、りんりん達は戦闘に簡単に勝つことが出来ていた。
「いぬいぬは【ビーストファング】!うまうまは【蹄鉄ハンマー】!」
「ワン!」
「ヒヒーン!」
「よっし!順調順調!いいよー!」
コウモリ型プロモン達が光となって消えていくのを見ながら、りんりんは先に進む。
ここまで金魚型やバッタ型、フラミンゴ型にコウモリ型と様々なプロモンが襲ってきたが、りんりん達の敵ではなかった。ゴールまであと少し。あと一回敵が出てきて終わりである。
「まあ、何が出てきても勝てるでしょ!」
「ワン!」
「ヒヒーン!」
そうして気楽に進むりんりん達の前に、ソレは現れた。二つの腕に二つの足。ぎょろりとした一つ目。ごつごつとした岩のような巨体。地球上の何処にもソレに似た動物はいない。だが、りんりんは一目見てソレが何なのか分かった。
「ゴーレム!?」
「ウゴゴゴゴゴ」
挨拶代わりにゴーレムがパンチを放ってくる。避けて!という指示が間に合い、ギリギリで二匹が回避に成功する。
「ウゴゴゴゴゴ」
「今までのプロモン達より強そうだけど、やることは同じ!うまうま、【いななき】!」
「ヒヒーン!!!」
うまうまの【いななき】が発動する。が、
「えっ!?効いていない!?」
「ウゴゴゴゴゴ」
ゴーレムは【いななき】に耐性があるのか、何も変わらず動いていた。
「だったらそのまま攻撃するだけ!うまうま!【突撃】!」
「ヒヒーン!」
ドカンとゴーレムの右足にうまうまがぶつかる。が、その攻撃はゴーレムに全く効いていなかった。
「効いていない!?だったら魔法系スキルで!いぬいぬ、【火炎の術】!」
「ワオーン!」
いぬいぬが一声吠えると、いぬいぬの目の前に火の玉が出現し、ゴーレムに飛んでいく。
「直撃!これならそこそこ効いたでしょ!」
火の玉がゴーレムの目に当たる。これはさっきの【突撃】と違って大ダメージだろうとりんりんは期待したが、その読みは外れた。
「あれ!?これも効かないの!?」
「ウゴゴゴゴゴ」
お返しとばかりに放ってくるキックを躱す指示を二匹に出しながら、りんりんは考える。
おそらくこのゴーレムにはどこかに弱点があり、そこに攻撃すればダメージを与えられるはず。でも弱点はどこだ?少なくとも目ではない。ファンタジーの小説だと、ゴーレムはコアと呼ばれる心臓のような部位があって、そこを攻撃して倒すことが多いが、そのような部位は見当たらない。
「いぬいぬ!関節に【ビーストファング】!うまうまは背中に【蹄鉄ハンマー】!」
弱点を探るために二匹に攻撃させる。だが、これらもダメージにはならない。腕、腹、首と他の部位も攻撃させるがやはり効かない。
――もしかして、いぬいぬとうまうまの攻撃力が低くて攻撃が通っていないだけ?
このイベントでは、出てくる全ての敵を倒さなければゴール出来ない。故にこのゴーレムが無敵であるはずがない。だから弱点がどこかにあって、そこを攻撃すればダメージを与えられると思っていたが、そんなものはない可能性が浮上してきた。もし弱点があるならば、イベントの敵である以上、もっとプレイヤーに分かりやすく存在感を出しているはずだ。
「どうしよう」
「ウゴゴゴゴゴ」
一週間何もしてこなかったわけではない。戦いの練習をしてきた。新しいスキルも覚えた。だが、攻撃が効いていない。
どうしようどうしようどうしよう――そう悩んでいたのが良くなかった。
「ウゴゴー!」
突然、ゴーレムが高くジャンプした。りんりんは、踏みつけられないように距離を取って!と指示をしたが、すぐに指示を間違えたことに気づいた。
ドスーン!!
ゴーレムが着地すると同時に、その衝撃で地面が揺れる。りんりん達はその衝撃を受けて立っていられず、その場に転んでしまう。指示するべきは着地に合わせてのジャンプだったが、悩んでいたりんりんは指示を間違えたのだ。
「ウゴゴゴゴゴ」
しかも運が悪いことにいぬいぬとうまうまはお互いすぐそばにいた。転んで立ち上がれない二匹の元にゴーレムが近づいていき、片足を上げる。
「いぬいぬ!うまうま!」
声をかけるが避けることは出来ないことは予想がついた。それでも、せめてー
「お願い!!!耐えて!!!」
りんりんが強く願うと同時に、ゴーレムが二匹を纏めて踏みつける。
ドオオォォン!!
大きな土煙が上がる。もっと早くリタイアの判断をするべきだった、とりんりんは思った。ゴーレムが足をどかすと、踏みつけられたいぬいぬとうまうまが光となっているのが見えた。
「いぬいぬ、うまうま、そんな――」
私のせいだ。私が指示を間違えたせいで二人が倒されてしまった。二人ともごめんよ。ああ、でも謝ってももう間に合わない。もう二人とも光となって消えて――
「――え?」
りんりんは目の前の光景に困惑した。間違いなくいぬいぬとうまうまは光となっている。だが、その光は消える様子はなく、むしろどんどん大きくなっていた。
ゴーレムが光に驚き、二匹を再度踏みつける。だが、光となった二匹はそれを受け止め、押し返した。
「二人とも――」
りんりんが声をかけると同時に光がパァッと弾けた。そこには二回り程大きくなったいぬいぬとうまうまが立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます