-3- 不協和音

 水曜日。めずらしく、心地のいい目覚めだった。ひどく頭が冴えている。昨日の体調不良は、一時の風邪のようなものだったのかもしれない。

 とにかく、いい目覚めだった。


 電車に乗る。いつもは憂鬱なのに、どこまでも行ける気分。満員電車で押されても、その人とハグだってできそうだった。

 会社へ着く。今日も上司は何かを言っている。その言葉が自分に向けられている。その事実だけで踊りだせそうな気分だった。


 なぜか、気味が悪いと言われて早く帰された。私はこんなにも元気なのに。仕方がないので電車でぐるぐる回る。

 環状線はいくら乗っても終わらないから、たのしいね。


 いつも帰る時間になったから、電車を降りた。

 帰り道、コンビニ弁当ではなくチェーンの定食屋へ向かう。ここ数年、よりつきもしなかった。けれど今日の私は違う。それだけの体力も、気力も、ある!


 アパートに帰宅する。部屋の前には薄暗い電灯に照らされた手紙。

 今日も手紙が落ちていた。ずっと、隣人宛だと思っていたがもしかして、あぁ──。

 私宛の、手紙!


 きっとそうだ。宛名は無いから勘違いをしていた。赤い手紙。今まで気づいてあげられなくてごめんなさい。ありがとう名前も知らないアナタ。こんな底辺人間に手紙をくれて! 返事を、書かなくては!


 その手紙は昨日よりも厚く、重い。けれどそれは、それだけ中身が詰まっているということ。それだけ、思いが詰まっているということ。

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