最終話 旦那様とても良い事しなすった
そして良い事をしたわねと言ってほしいと思っていた自分が恥ずかしい。
二人の間に⾧い沈黙のとばりが降りた。
「先の事が読めないのもいい加減にしてよ!」
「すまなかった」
私は怒りのおさまらない妻に謝るしかなかった。
朝日が差し込むキッチンで朝食をとる二人。
昨日の事でまだ腹が立ってるだろうなと思ったが「昨日はごめん」
と私は言った。
妻は黙っている。
そりゃ自分が心を込めて作ったニット帽を雪まみれにされたら怒りが収まらないよなと思った時
「私こそごめんなさいね」
と妻が言った。
「え?」
「実は昨日お地蔵様の夢を見たの」
「どんな?」
「ズシン、ズシンという音が遠くから聞こえてきたんでそっと外をのぞいてみたのよ」
「そしたら?」
「雪の中を、ニット帽をかぶったお地蔵様が重そうな荷物を引っぱりながら歩いて来たわ。一番後ろのお地蔵様はあなたのマフラーをかぶっていたわ」
「そうなんだ」
「親切な旦那さんの家はどこかいな~って言いながらどんどん近づいて来るの」
「ドキドキするよね、続きを聞かせて」
と私は身を乗り出した。
「お地蔵様と目が合ったんで私がゴクリと唾を飲み込むとニッコリ笑ってくれたのよ」
「ほうほう」
「そしてこう言ったわ。旦那さんは、わし達が雪の中で寒そうにしていたんで帽子を被せてくれたんじゃよ…ってね」
「はい、まさしく」
「ありがたいことじゃ、あんなに優しい旦那さんはおりゃせん、叱っちゃだめじゃぞ…って言ってニッコリ笑ったわ。それからまた重そうな荷物を引っ張って帰って行ったのよ」
「なるほどねえ」
「私がカリカリしてあなたを叱りつけるからお地蔵様が悟しに来てくれたのね。ごめんなさいあなたの優しさをわかってあげられなくて。改めて言うわ。”“それは良い事をしなすった、優しい旦那様”」
私は何だか恥ずかしくなった。
翌日、宅配便が届いた。
10kgのお米10袋を配達員さんが額に汗をかいて運んてくれた。
宛名はジークロホールディングスの柳川先輩からだった。
「柳川先輩ありがとうございます」
早速、電話した。
「JA三橋のCMで栗原千秋さんの衣装をうちが提供したんでお米が1000袋も届いてね。社員にシェアしてもさばき切れないから送ったんだよ」
「本当に感謝しています。先輩はかさこ地蔵ですか?」
「何言ってるの?」
先輩はかさこ地蔵ですか? @J0hnLee
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