第23話 改変して弱体化させる
「ヘビ系のモンスター一覧を出してくれ」
「はい、マスター」
俺はロープの代わりにヘビ系のモンスターを使うことにした。我ながらいいアイデアだな!
エリンはもう一つ画面を出現させて、キーボードをしなやかに操作する。すると細長いモンスターばかりの一覧が出きた。
「レッドスネーク、ブルースネーク、イエロースネーク——」
属性ごとに色が違うタイプの奴か。あとは……げっ、ラミアも混ざってるじゃないか。上半身が女性で下半身がヘビのやつ。うおっ、メデューサまでいる。確か頭にヘビがいるんだっけか。ヘビ系にされててちょっとかわいそう。ていうかボス級じゃね?
「おっ、これは何だ? どれどれ……」
【メタルサーペント】
Aランクモンスター。黒く金属のような強度のウロコをもちながらも、その動きは滑らか且つしなやか。一度でも敵と認識した獲物に巻き付き最後まで縛り上げる。その力は岩をも砕くほど。そして強力な毒をもつ。
万が一巻き付かれも暴れてはいけない。余計に締め付けが強くなるだけである。
よし、こいつにするか。『最後まで縛り上げる』って表現が怖い。要するに最期までってことだろ? さすがにそれは俺としてもマズい。
「エリン、このメタルサーペントってのを作り出せるか?」
「お任せくださいっ!」
エリンがキーボードをカタカタすると、画面にメタルサーペントが大きく表示された。おそらくあとはエンターキーを押すだけだろう。
「こいつのステータスを書き換えてくれ」
「どのようにしましょうか?」
「能力値はそのままで、獲物を最後まで縛り上げるという習性を無くして、動けないくらいの力で縛り上げるに変更できない?」
わざわざ弱くするなんて、メタルサーペントの長所を改悪するようなオーダー。
「やってみますね!」
エリンの指が高速で踊る。実はエリンのダンジョンマスターとしての能力って、かなり優秀なのでは? ただ優しすぎるだけであって、こうやって補佐的な役割だと活躍できそうなもんだけど。
「できましたっ!」
「おお、早いな! さすがだ!」
ここまできてなんだけど、今更ながらエリンは俺がやっていることをどう思ってるんだろう? お姉さんをあんな目に遭わせたし、嫌われてもおかしくないようなことだよな。
「エリン、その……俺がしていることに引いたりしてないか?」
「マスターは私のために考えてくれているんですよね? それに私としてもこの男の人には罪を償ってほしいですから」
「ありがとう、そう言ってもらえると助かる」
そして弱体化させたメタルサーペントをダンジョンへと放つ。男は仰向けになっており、意識がハッキリとしないようだ。目の周りではきっと小さな星がグルグルと回っていることだろう。
そのスキに男を座らせて、メタルサーペントを腕と胴体にグルグルと巻き付かせた。それにしてもこんなにデカいとは。幅は10センチほど。そしてとにかく長い。まさにグルグル巻きだ。画面だけじゃ分からない情報ってあるんだな。
それから数分後、男が意識を取り戻した。が、腕と胴体をヘビで縛られている状態。足は自由だから、逃げようと思えば逃げられるかもしれない。
「うおおぉぉ! なんだこれ! メ、メタルサーペント!?」
当然の反応だ。ヘビ好き以外誰だって驚く。再び気絶してもおかしくない。それにしてもさすがAランクモンスター、有名じゃないか。
「縛るにしてもロープとか他にもっと何かあるだろ! ひいぃぃ! 俺が悪かった!」
(ロープが無かったからこうしてんだよなぁ)
「動くと余計に締め付けが強くなるらしいから、あまり動かないほうがいいらしいぞ。それと毒があるから噛まれないように気をつけろ」
「この状況でどうやって気をつけろって言うんだあぁーっ!」
安心しろ、噛まないようにちゃんと習性を書き換えてあるから。言わないけど。
初心者狩りの確保はこれでいいとして、あとはアナスタシアさんに報告するだけだな。
「今アナスタシアさんに連絡とれない?」
アナスタシアさんがこのダンジョンに来るのは朝になってから。今は深夜だからまだまだ時間がかかる。さすがに徹夜はキツい。
「うーん、難しいかもしれません」
「そっか、大丈夫! 俺が見張っておくからエリンは寝ててくれ」
(こうなりゃ徹夜明けで出勤してやるぜ!)
「そんな、マスターが頑張ってるのに私だけ休むだなんて」
「いいからいいから」
「いえっ! マスターは寝てください」
同じやり取りを繰り返し、俺はエリンに任せて寝ることにした。時には厚意を素直に受け取ることも必要だ。
翌朝。
「エリン、おはよう」
「おはようございますマスター」
「やっと起きたか、これはどういうことか説明しろ!」
予想通りというかなんというか、寝起きでアナスタシアさんに問い詰められた。
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