第2話 炎の旋律

夜はさらに深まり、静寂と熱気が交差する神社の境内。紅葉は鉄板の上で踊り続け、その舞は次第に力強さと妖しさを帯びていった。観客たちは息を詰め、彼女の動きに魅了され、時間の感覚さえ忘れていた。彼女の足が鉄板を踏み鳴らすたび、冷たい夜気に熱が溶け込み、視界がかすかに揺らめく。


紅葉の踊りは一種の魔法のようであった。舞うたびに、その白い衣がふわりと揺れ、まるで夜の闇に浮かび上がる光のように彼女が輝いて見えた。彼女は、まるで神々と交信するかのように、何かを込めて踊り続けている。その姿に、人々はただただ見入るしかできなかった。


そんな中、紅葉の瞳が再びあの男性を捉える。彼の存在を意識するように、紅葉の踊りはさらに艶やかに、そして大胆に変化していった。彼女の目はまっすぐに彼を見つめ、その視線には言葉を超えた何かが込められていた。その瞬間、彼は彼女とのつながりを感じ、逃れることのできない強い引力に引き寄せられる。


紅葉は舞いを続けながら、彼の方へと一歩、また一歩と近づいていく。彼女の素足が鉄板の上で響く音が、まるで彼の心臓の鼓動に重なり、熱く高鳴るようだった。彼女の手がそっと伸び、その指先が空を切るたびに、彼は彼女の熱気を感じるような錯覚に陥った。


観客たちは、この二人の間に生まれる緊張感に気づき、言葉を失って見守っていた。紅葉の踊りは、もはや単なる舞いではなく、彼と彼女が互いの心を交わす儀式のようにさえ見えた。彼の目には、もはや彼女しか映らず、彼女もまた、彼を見つめながら、踊りを続けることに心を捧げていた。


そして、夜の帳が少しずつ降り始めるとともに、紅葉の舞いは頂点に達した。その瞬間、彼と彼女の視線が交わり、観客たちが息を呑む中、何かが二人の間に確かに生まれた。鉄板の上で踊る彼女の姿は、彼の心に深く刻まれ、夜の闇に染み込むように消えていった。


紅葉と男性の視線が交わり、熱を帯びた舞が意味するものとは――。

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