鉄板の上で舞う巫女
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 招かれた夜
秋の夜、冷たい空気が神社の参道を覆っている。町全体が待ち望む年に一度の祭りが始まると、にぎやかな音色が夜の静寂を破った。けれども、その奥で行われる「鉄板の舞」は、ただの祭りの一部ではない。人々は口を噤み、身を潜めて巫女の舞を見守る。その姿は儀式にも似て、誰もが息をひそめて待ちわびる。
紅葉(もみじ)という名の巫女が、ゆっくりと祭壇に上がる。彼女は白い装束を身にまとい、その透けるような薄衣が、彼女の清楚でありながらもどこか妖しげな雰囲気を際立たせていた。紅葉は静かに神々へ祈りを捧げると、ゆっくりとその素足を冷たい鉄板に置く。その瞬間、まるで彼女が別の存在に変わったかのような錯覚を、観客たちは感じた。
冷たい鉄板の上に彼女が立つと、白い息が立ちのぼる。紅葉は目を閉じ、ゆっくりと足を動かし始めた。最初は静かに、慎ましやかに、けれども次第にその動きは熱を帯び、軽やかに舞う彼女の姿が見る者を圧倒していく。彼女の体が小さな動きで大きな波を描き、視線がすべて彼女に集まる。
紅葉はその動きの中で、不意に一人の男性に視線を向けた。彼もまた、その妖しげな瞳に釘付けになる。普段の巫女としての紅葉ではなく、妖艶な魅力を放つ彼女の姿に、彼は息を呑んだ。彼女の動きは次第に大胆さを増し、鉄板の上で響くその音が、まるで心の奥にまで響きわたるように感じられる。
夜が深まるにつれ、紅葉の舞はさらに力強く、艶やかになっていった。この舞が終わる頃には、彼女と彼の間には言葉を超えた約束のような何かが芽生え始めていた。それが何であるか、二人にはまだわからない。しかし、その夜の視線の交わりは、次の物語の始まりを暗示していた。
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