第11話  係長 VS 盗賊団④

【ニコニコ動画流星群を聞きながら、あの時のニコ厨に愛をこめて】


「ここがあの野郎のハウスね……ッ!」


「盗賊のアジトやな」


 俺はシシロウに案内されるように、銀狼衆のアジトに足を運んだ。

 

 そこは、山奥にひっそりと佇む洞穴……洞窟という方が近いだろうか。

 自然にできたというには、ずいぶんと手が込んでいるというか、人工的な工事が行われたような感じさえする。


「ここは、もともとアーチ国がエルフと戦争する時に中継地になった場所でな。今じゃ不要になったところを、銀狼衆が勝手に住み着いとるんや。

 ちょっと前まで鉱山としても使ってたみたいやし、結構広いで」


 なるほどな。

 ゴブリンとかの洞穴かと思ったけれど、ここには魔物が嫌がる神秘殺しがあるみたいだし、ちょっとおかしいかな、と思っていたが、そういうことか。


「ワイでもここを攻め込むのはちょっと尻込みしとったんやけど、まぁお前ほど強いヤツが一緒なら確実に壊滅できる自信があるわ」


「んで、ケルちゃんは本当にあそこに連れ込まれたんだよな?」


「この人、目玉飛び出そうで怖い……」


 コイツ、質問にちゃんと答えないタイプだな。

 

 そういう感じの視線をシシロウに向けると、『こいつ怖~』みたいな反応をしつつ答えた。


「よう分からんけど、シンガプーラの子ネコが銀狼衆に連れ込まれてくのは見たで。

 よく手入れされた珍しい品種の子やし、貴族のペットとしてはええかもしれんな」


「行くぞシシロウ! 俺たちで小汚い盗賊ども全員ブチ殺してやるんだ!」


「はい、頑張ってくださいやで」


 お前も盗賊ぶっ殺すんだろうが。


「お前なぁ……事情はよう分からんけど、少し冷静になりや」


 この浪人風……現代的には無職は、女の子が危機的状況にもかかわらず、無責任なことを言い始めた。


「よく考えてみ。あいつらは銀狼衆っつう、仮にもエルフ狩りをして国の貴族に遺体を売りさばき、多額の資金を築いて勢力を伸ばしていった強大な組織や。

 例え、お前とワイがどれだけ強くても、そんな簡単に倒せる奴らやない」


「……」


 それは……確かにそうだ。

 さっきの鉄球男は軟弱な精神論を語っていたが、現実的に、この銀狼衆とやらはこの世界でもそれなりの勢力であることは間違いなさそうだ。


「お前も分かっとるんやろ? 確かに、ここにいる盗賊たちは一人一人の戦力は弱い。

 けれど、暗殺や謀殺……それらの随一の能力を持っとる。

 ワイだって、奴らが本気で隠れていたらその気配をちゃんと追えないかもしれん」


 シシロウは物陰から弓矢を放つ盗賊の攻撃をかわし、その矢を掴んでそれを放った盗賊に返しながら答える。弓矢を放った盗賊は首を矢に貫かれて死んだ。


「まぁ……それは確かに」


 シシロウの言う言葉には、覚えがあった。

 例えば、あの鉄球男。俺の丸々潰せるほどの鉄球を持っていたにもかかわらず、ソイツが接近するまで、俺はそいつの奇襲を避けれなかった。


 盗賊。


 確かにRPGとかでは攻撃力や防御力にこそ特化していないが、技能という点で特筆すべき存在を、俺はもっと警戒するべきだったかもしれない。

 俺は背後からナイフで奇襲する盗賊の攻撃を躱し、首を掴んで捻り殺しながら、感情的になった心を自制した。

 

 パワーでは絶対的に勝っていても、搦手で負けてしまうことなんて、世の中いくらでもあることだ。


「悪かった……。俺、ちょっと冷静じゃなかったかもしれん」


「やぁーっと落ち着いたか。ホンマ怖かったで、お前。だって眼孔開きっぱなしで瞬きせんかったもん。ずっと八尺様がいる気分やったわ」


 シシロウは何が面白いのか「ハッハッハッ」と笑って答えた。

 そんな中、銀狼衆の構成員たちが、アジトの前にいる俺たちが談笑しているのを見たからか、ゾロゾロと集まって来た。


「お前みたいな奴には分んないかもしれないけど、俺は世界で唯一って思える子がこの世界に紛れ込んでしまったんだよ。

 こんな、家族もいない世界にさ。その上、野蛮な盗賊どもの群れに迷い込んだらさ、ちょっと冷静じゃなくなるのも分かってくれるだろ?」


 俺は言い訳がましくも、愉快に笑うシシロウに言い返す。

 銀狼衆の下っ端が鋭い短剣を俺に向けて襲い掛かるのを、俺は余裕で躱して鉄パイプで頭を撥ね飛ばす。


「わーっとるわーとる。

 お前も仲間が連れ去られて冷静やなかったんやろ? 気が気でなくなるもの当然や」


 シシロウの上空から3人の盗賊が襲い掛かるが、それらは攻撃する間もなく、それぞれ3枚におろされ、何もできず地面に伏した。

 抜刀術の一種かな、凄いなぁ。


「けど、人生の先輩として忠告したるわ。

 人間、少し冷静になろう、少し休もうという選択肢が見えなくなくなった時が、後の人生で後悔することが多いんや」


 もはや突貫しにきたのか、銀狼衆の盗賊が4人が普通に襲いかかったが、俺は全員を鉄パイプで頭から吹き飛ばした。


「シシロウ」


「なんや」


「考えがあるんだが……」


 盗賊が落とし穴みたいなところから現れて強襲してくるが、ハイキックで気絶させた。


「なんや、言ってみ」

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