第11話 国王直属討伐隊の末路
「ふ、陛下もたかだか村人と変わらぬ者に我らを派遣するとはな」
松吉たちがバッカスの元を去った後、異界の勇者──土岐陽気と同時に王命により松吉の元に派遣された討伐隊の長であるスイフはほくそ笑みながらバッカスの工房に馬を進めていた。
簡単な任務ということで隊の緩い雰囲気は緩い。
「確かそいつとジジイとエルフのガキだったよな」
「ああ、そいつと老いぼれの方は抵抗の可能性が高いからすぐ殺して良いがエルフの方は備品として我らの隊で共有するつもりだから乱暴に扱うなよ」
「へ、わかってまさあ! スイフ隊長!」
スイフが釘を刺すと荒くれ者の騎士が舌なめずりして答える。
そうして駄弁りながら進むと森を抜けてバッカスの工房が見えた。
そろそろかと思い獰猛な笑みを騎士たちが浮かべるとバッカスの工房の付近に黒装束の怪しい集団がおり、こちらに近づいてきた。
「王都で地牛様に手を出そうとした異端者どもと同じ服を着ているぞ!」「神敵だ!」「悪魔の徒だ!」
「啓示を果たし主の元に帰還すると神敵……。新たな啓示が下されました。異端者共を殲滅しなさい」
黒装束の集団が気色ばみ始めると、フードから包帯を覗かせる女が中央から出てきて、黒い
「ああ? 地牛松吉のメガネの仲間かよ。めんど臭えなぁ」「上等だな! 陰気臭い浮浪者風情が剣の錆にしてくれるわ!」「寄せ集めの雑魚風情が我らに歯向かうなど!」
「我らに刃向かうということは王に刃向かうことと同義である! リーダー格の女はそいつらの前で回して陵辱しきってから殺せ! 周りの奴らも絶望のどん底に落としてから殺すのだ! これは断じて許されぬ蛮行である!」
突如の宣戦布告に討伐隊の騎士たちが黒装束の一団を格下と決めつけ、舐めた口を聞くとエルフを前にお預けを食らったことに対してブチ切れたスイフが怒号を飛ばして戦いが始まった。
ぶつかると同時に一方的に討伐隊の最前に並ぶ騎士が潰され、黒装束の集団は止まることなくスイフのところに雪崩れ込んでくる。
黒装束の集団──拷問の際に長持ちするという理由で第一王子に囲われて居た元戦奴たちは黒剣を抜くと死など恐れないような苛烈な攻撃を繰り返しまるで反攻を許さず進み続けてくる。
被虐の日々の中で磨がれた痛みへの耐性と救いの主のために働くという自己陶酔がそれを成していた。
「なんだこいつらは!?」「うわあああああ!」「こんなの聞いてねえぞ!」
討伐隊の騎士たちが怖気付き悲鳴をあげるうちにもまた一人また一人とどんどんやられていく。
「地牛様が私を導いて下さる!」
その中でも包帯の女は凄まじく、一人だけ先行し、騎士達の肩を足場にしつつ脳天を正確に突いていきながら進んでくる。
「近づけさせるな! 私を守れ!」
討伐隊は上級騎士という上位職を獲得した選ばれし騎士だけで構成された強者の集団であるはずなのに、まるで黒装束のものたちに歯が立たない。
王都では負けなしだったため、今までに経験したこともない事態にスイフが狼狽える。
「来るなあ! 来るなあああああ!!」
スイフが絶叫すると目前に進み出た包帯女が赤い眼を見開いて、スイフの四肢を滅多突きにする。
痛みと恐怖でスイフは失神し、意識が失われた。
しばらくして目を開けると酷く暑かった。
「熱い……。熱いぞ……」
「ああああああ!!」「燃える! 助けてくれ!」「うあぁ………」
見ると自分の足元で負傷して身動きの出来なくなった討伐隊のメンツが生きたまま燃やされていた。
「こ、これは……」
慌てて逃げようと思うと穴だらけになった手足が木組に括り付けられていることがわかった。
「我らが主よ! 冒涜者の最後の光と我らの祈りをお受け取り下さい!!」
両サイドに笑顔で火魔法で火を焚べる双子の少女と恍惚な顔をして空に吠える包帯女を確認すると黒装束の集団が松吉の名前を呟きながら祈り始める。
「あああ! ああああああ!!」
祈りと同時についにスイフが燃え上がり、絶叫を上げると一際大きく熱狂する声が月夜の森の中で響き渡った。
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