第9話 闇ギルド潰すしかねえなこれ
「ぶ、無事だったか」
工房に戻ると緊張をした様子でバッカスが声をかけてくる。
足が震えているのを見ると俺に対して恐怖を抱いているのがわかった。
成り行きとはいえ「威圧」を浴びせて、目の前で人を殴り飛ばしたのだ。
こうなってもしょうがない。
「お主に守られたと言うのにこんなことを言うのは間違っとるとわかっとる。……すまん。出ていってくれ」
震える体でバッカスは土下座する。
「お主にも事情があるのはわかるがあのような刺客を寄越されてはとてもではないがこの子を守りきれん。それにお主を見ると体の震えが止まらなんのだ……。お主には本当に感謝しておる。この老いぼれが惰弱なばかりにすまん」
当たり前の反応だな。
厄介者にはまた災いを引き寄せる前に消えてもらうしかないし、いるだけで平静が脅かされるのならもうダメだろう。
「顔を上げて下さい。バッカスさんには非はないですし、刺客が寄越されることを想定してなかった俺の脇の甘さが原因ですから」
「すまん。本当にすまん」
バッカスは顔を上げるように促すがなおとして地面に額をつけて謝り続ける。
本当に申し訳ないと思ってやっているのだろうが俺にはその姿はひどく毒だった。
出ていくか。
元々そろそろ出ていこうと思っていたのだし。
「お世話になりました」
「……転移の研究者を探すのなら賢者ユーリンか、その弟子をあたると良いかもしれん。弟子の一人──ティアーナは
行こうと思うとバッカスが額をつけたままそう助言してきた。
有益な情報だ。
「ありがとうございます」
「あ……」
礼を言うと土下座するバッカスの姿とこちらに震える手を伸ばすエリアの姿を最後に見ると工房から外に出る。
当初の予定通り、村から出てエルフ族領に向かうか。
着いたら賢者ユーリンの弟子──ティアーナを探そう。
そう考えていると一瞬視線を感じ、振り返るといつぞやエリアをナイフで襲っていたチンピラが路地から出てバッカスの工房に足早に向かうのが見えた。
お世話になったし、兼ねてから次見かけたら闇ギルドごと消すって決めてたからな。
やるか。
「ゲハハ! あいつ行きやがった! 今のうちにジジイぶっ殺して、エルフのガキ可愛がってやるか!」
「待ってください」
「あん!! なんだゴラァ!! 今忙しいんじゃボケ!! あん、体が動かね……」
「闇ギルドのアジトに案内してもらえますか?」
「あああ……、あんたは行ったはずじゃ……」
肩を持って止めるとナイフのチンピラは振り返って青い顔になる。
「案内して下さい」
「は、はい……」
促すとチンピラは返事をして来た道を戻って、森の中に入ってしばらく進むと元貴族の館なのか入り口の前でチンピラが屯する三階建ての廃屋が見えた。
「おい、何だお前? 貧相な奴捕まえて来やがって! そんなもん売りもんになんねえだろうが!」
「付いてこい」
「「「ヒ、ヒィ!」」」
チンピラたちがいつものように散らせても探す羽目になるので、付いて来させる。
「何だテメエら! なんでヒョロガキの後ろにいやがる!!」
「部下を連れて自首しろ」
「ヒィ! は、はい!」
異様な光景に凄み始めたリーダー格に「威圧」を掛けて命令すると部下を率いてその場から退場していく。
「そ、そんな! 俺たち約束守ってたじゃないですか!」「俺たちはただやりたい放題やって面白おかしく生きたかっただけなのにこんなのあんまりだああ!」
震えながら俺に話しかけてくる奴がいると思うといつぞやのモヒカンと眼帯のチンピラだった。
「お前らがやろうが他の奴らがやろうがやられる側からしたら同じなんだよ。ささっと自首しろ」
「「ヒ、ヒィ!」」
俺が「威圧」を掛けて促すとチンピラたちの元に戻っていく。
「一応言っておくが。全員自首しなかったら体が真っ二つになるからな」
様子からして必要ないとは思ったが、剣スキル──「絶剣」でチンピラたちの武器を指定して真っ二つにしてから脅しを掛けておく。
「ヒ、ヒィ! ぶ、武器が!! やべえぞ早く自首しねえと殺される!!」
武器がガラクタになったのを見るとチンピラたちは血相変えて、自首をするために王都に向かって走り始めた。
出ていくのを見送ると二度と悪用されないように建物を処分することにする。
正面に移動して拳を打ちつけて、ハンマースキル「バーストエンド」──攻撃力に応じた爆発を起こすスキルを発動して吹き飛ばす。
これで闇ギルド殲滅は終わった。
今日はいろいろなことがありすぎた。
肉体的は負担は少なかったが精神的疲労が大きい。
処分の時に生じた瓦礫の上に腰を下ろす。
「なんだか疲れたな……」
一時的にこの世界との接触を切ってリセットするか。
目を閉じて顔を両手で覆う。
これを十分程すれば精神が多少持ち直す。
「元の世界に帰りたい……」
───
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