第8話 許すわけねえだろ
「死んだぞ! テメエエ! 隠キャ野郎!」
土岐は白い剣を放電させると振りかぶって雷を帯びた衝撃波を飛ばしてくる。
手刀で迎撃すると手刀に達する前に生じた風圧で衝撃波は消し飛んだ。
あまりにも威力が弱すぎる。
狙いはわからないがこんなものでもここで戦闘続行していればバッカスの工房や村に被害が出て迷惑なので場所を変えることにする。
「ハアハア……。オレの最強技が……」
「場所を変えるぞ」
「は?──ぎゃあああああああ!!」
ジャンプして距離を詰めるとブツブツ何か呟いている土岐を殴りつけて近くにある岩山に飛ばしてここから強制的に移動させる。
着地した地面が陥没し、周囲のものを破壊して迷惑なので使わないようにしている大ジャンプ──勢いをつけたジャンプをして俺も岩山に移動する。
着地する際に岩山の斜面を転がっていく土岐が見えたので着地の際に生じたクレーターから上がって本人の元に向かう。
「あああああああ……」
殴られた方の頬を大きく腫らし、手足を粉砕骨折したのか、ありえない方向に曲げた土岐の姿が見えた。
スキルなしで殴っただけでこれか。
弱い。
あまりにも弱すぎる。
体感で魔族の名無しの兵士と変わらない。
一時殺意にまで至った怒りが急激に冷めていくのを感じる。
バッカスが傷つけられた怒りよりも弱いものいじめのようで相手が惨めだと思う気持ちの方が勝ってしまっている。
「ぼう戦えません。許じて下さい」
俺がもうこれくらいで良いかと思うと近くに俺がいることに気付いたようで、土岐が動かない手足を引き寄せて土下座のような姿勢を取り始めた。
「許すわけねえだろ。何言ってんだお前」
その言葉でまた消えかけた怒りの炎が再燃した。
手足がボロボロになった程度でなんで許してもらおうとしてるんだこいつは。
あれだけやって都合良すぎだろ。
イラッとする。
このまま回復させると手足がグチャグチャにくっついて使い物にならなくなるので意識を刈り取って手足を切り落としてから回復させようと思っていたが、意識刈り取りなしで回復なしにするか。
回復なんぞ王城にいる誰かがすれば良いしな。
「な、何をしようとじているんですか!?」
「手足を切り落とそうとしてる」
「なんでそんな酷いことずるんですか!? オレだち一緒に魔王と倒そうとした仲じゃないですか!!」
「俺とお前の仲……? そういえばお前……俺が召喚されて即追放された時にバカ笑いしてたよな」
こいつが下らない世迷言を言うせいで嫌なことを思い出した。
ささっと済ますか。
「逃げるな」
「あああああああああああ!!」
折れた手足を動かして必死に逃げようとするので背中を踏んで抑えつけ、手刀で手足を切り落とすと土岐は絶叫を上げて失禁した。
切り取った手足はここに置いておくのは猟奇的すぎるし、モンスターが人の味を覚えて下山しかねないので何かでまとめて王都にこいつごと送り返すか。
袋があれば良いと思ったが切らしているので縄で代用して切り落とした手足を結んでいく、全てつけると縄の端と端を結んで首飾りのようにすると土岐の首に掛ける。
土岐がかなりおどろおどろしい見た目になったが今から王様に釘を刺しに行こうと思うのでちょうど良いか。
土岐の首根っこを掴むと岩山から王城に大ジャンプする。
屋根をぶち抜くことになるがクズ王には散々やられているので気にしなくて良いか。
「な、何じゃ!? 天井が!!」
屋根に降り立つとそのまま屋根をぶち抜いて、床に着地する。
「き、きさ、貴方様は地牛松吉のメガネ!!」
「返すわ。これ」
ちょうど王の居る場所に降りたったようなので、土岐を床に放ってリリースする。
「そ、それは土岐陽気か!?」
「王様、あんたのぜいで俺の体がこんなんなっぢまったじゃねえか! どうじてくれんだ!」
「ヒィィィィィィ!!」
目の前にいるボコボコになった土岐の存在が信じられないのか、国王が疑問の声を上げると土岐が恨み節を上げながら這って国王の元に近づいていく。
見せしめとしての土岐の姿は効果覿面だったようで、国王が青い顔をして絶叫をあげる。
「俺との約束を破ったり、ふざけたマネをしたら次はお前がこれだからな」
「ヒ、ヒィ! ああああああ……」
国王に釘を刺すとガタガタ震えて失禁し始めた。
脅しは聞いているようだしこんなもんでいいか。
また大ジャンプして岩山に戻ると歩いて村に戻ることにする。
───
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