第6話 いきなりホラーで草



「チンピラに寝込みを襲われると思ったけどなかったな」


 魔王を倒すために魔族領に行っていた時にはよく寝込みを襲われたので警戒していたが、杞憂に終わった。

 そりゃ自分の国を滅ぼしに来てる奴と因縁を着けてるだけの相手では対応が違うか。

 野営していた場所に砂を掛けて平すと森人エルフ領に行くために西に進んで行く。

 しばらく行くと村が見えた。

 真っ直ぐ行くにはここを通る必要がありそうだ。


「オラ! ガキャア! 持ってるもんと服置いてけや! ゴラアア!」


 街の中に入っていくとちょうど出入り口となる場所でチンピラが子供を追いかけてナイフを振り回している。


「すいません、出入り口でナイフ振り回すのやめてもらっていいですか」


 子供を斬りつけようとする時に俺も纏めて斬られそうになったのでナイフの刃を指で摘んで止める。


「なんだテメエ邪魔してんじゃねえ!! 指切り落とすぞコラ!! あ? あん……? 動かねえ……!?」


 俺の指を切り落とそうとしているようだが全く動かないことで俺とのステータス差がわかったらしく、青ざめた顔をするとナイフを放って逃げ始めた。


「テメエ! 闇ギルド敵に回したぞ!」


 最後に捨て台詞を残すとチンピラは村から消えた。

 こいつも闇ギルドの人間か。

 流石にいく先々で会ってるし、迷惑すぎるな。

 次会ったら、ギルドごと消すか。


「お兄さんって強いの?」


 闇ギルドのことを考えていると帽子を目深に被った長耳エルフの少年が尋ねてきた。

 俺のような貧体の人間が強いと言っても滑稽なだけなので適当に否定して、知ってる可能性は低そうだが異世界転移の話に話題を変えるか。


「いえまったく。それよりも異世界転移の方法について何かご存知ないですか?」


「異世界転移……。お爺ちゃんがそんなこと言ってた気がするけど」


 ダメだろうなと思ってたけど意外にヒットしたな。

 この子のおじいちゃんということはエルフの老人ということだし、長い人生の中で知るっていうこともあり得るか。


「良ければお爺さんの元に案内してくれますか?」


「良いよ。付いてきて」


 少年が先導し始めたので付いていくと木製の家が見えてきた。

 標準的な人族の家だ。


「お爺ちゃん、ただいま」


「おお無事に帰ってきたか、エリア! なんじゃそいつは? アダダダダ!」


 家の中に入るとエルフではなく人族の老人がおり、腰を痛めているのか、身を起こすと苦悶の声を上げた。


「さっき助けてくれた人」


「助けてくれたか。腕が立つようには見えんが。まあエリアが言うのなら信じるか。孫が世話になったの。もてなしてやろう。アダダダダダダ!」


 ベッドから降りるとまた呻き始めた。

 重症だ。

 見てられないな。


「メガネさん、お願いします」


「おお。腰の痛みが引いたわ。また恩義ができてしまったの。張り切っていくぞい!」


「いえそう言うのはいいので。代わりに異世界転移のことについて教えてもらっていいですか?」


 腰を治すと体が全快してテンションが上がったのか、意気揚々と台所に向かい始めたので静止を掛けて、聞きたかった転移のことについて尋ねる。


「異世界転移……。どうしてそんなもんを?」


「俺が異世界から来た人間だからです。元の世界に戻りたいので異世界転移の方法が知りたいんです」


「異世界から来た人間か。異なことだが冗談を言うタイプではなさそうだしの。儂の知ってることを伝授したところでお主が異世界転移することはできんがそれでもいいか?」


「構いません。少しでも異世界転移できる目ができるなら」


 今は異世界転移の情報が少しでも欲しい。

 できないとしてもある程度のことはわかるし、何もない所から始めるより遥かにマシだ。


「ふむ。なら良い。そういえば自己紹介がまだじゃったの。儂はバッカスと言う。お主の名前はなんと言う?」


「俺は地牛松吉です」


「地牛松吉か。松吉よ、よろしくの」


「バッカスさん、よろしくお願いします」


 お爺さん──バッカスと握手を交わす。

 ちょっとした出会いから転移の足がかりが掴めるとは僥倖だ。

 珍しくついているなと思うと不意に窓から視線を感じた。

 見ると包帯だらけの顔があり、目が合うと逃げていた。


「すいません、外に怪しい人がいたので少し見てきます」


 一言断りを入れて外に出ると包帯頭の襤褸を着た女が走り去っていくのが見えた。

 いかにも怪しい。


「待ってください」


 ダッシュすると追いつけたのでそのまま肩を掴んで止める。


「お許し下さい地牛様!」


 静止すると土下座し始めた。

 誰だこの人。

 なんか敬っているような感じだが。

 知り合いかと記憶を巡るとそういえば第一王子の奴隷を散らしたことを思い出した。

 あの中にこんな人がいたような気がする。

 よく見ると近くにある木々の中に元奴隷の集団がいるのが見えた。

 生活できる当てもなくとりあえず俺に付いてきたってところか。

 流石にこんな異様なものを見られたら出ててくれとバッカスから言われかねない。


「許すも何も俺にも責任がありますから。生活に困ってるみたいですね。これでも足しにして、自分たちの生活の拠点を作って下さい。ここは私有地なので」


「お賜りものをありがとうございます! ご啓示に従い行動させて頂きたいと思います!」


 オリハルコンを手渡すと宝物を貰ったように目を輝かせて、包帯女は奴隷たちの元に帰っていき、奴隷の集団は去っていた。

 新興宗教にハマった人みたいだな。

 まあ去ってくれるならそれでいい。

 さてバッカスの元に戻って、異世界転移のことを伝授させてもらうか。


    ───


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