第3話 落ちつけ俺
落ち着け俺。
流石に今から国を滅ぼすのはやりすぎだ。
約束を破るのは国王と一緒だしな。
ちゃんと約束を守ることにしよう。
国滅ぼすのは一年後だ。
まあ元の世界に戻れる手段を見つけることができれば滅ぼさないと言っても国王の感じからして全く現状では手がかりはないみたいだし、そうなる可能性は極小だが。
これでも譲歩している方だ。
本音をいえば確実に俺と同じように地獄のような苦しみの果てに絶望を味わってほしい。
だがそれでは国王と同じになるので理不尽なことはしない。
もはや帰還するのは絶望的だが諦めきれないし、自分でも探したり、魔法などを研究して帰還方法を試行錯誤したりするか。
時間もあるし。
もう王都には用はないし、早く出てしまおう。
王城の周りにいるだけでも国王の下らない嘘で死ぬ思いして二年間棒に振ったことを思い出してまた怒りが膨れ上がってきてしまうし。
「平伏せ愚民共! 奴隷が通り終わるまで頭を地面につけていろよ! 上げた奴は即斬首で殺すからな!」
ささっとここから抜け出そうと思っていると一部体が欠損した血だらけの奴隷の行列が道を遮るように四つん這いで這いながら横断しており、それの周りに通行人が土下座しているのが見えた。
虐待されてる奴隷の大群と権力にひれ伏す平民。
酷い光景だ。
大声を挙げて踏ん反り返っている金髪マッシュヘアの男がこの馬鹿騒ぎをやっている張本人だろう。
こんな大通りで馬鹿騒ぎをやっているところを見ると偉い貴族か何かだろうか。
国王と謁見する前は貴族たちの風評を悪くして、元の世界への帰還が取り消しになることを恐れ、通行人と共に平伏しただろうが、今の俺にとって国王含めてこの国の貴族の価値はゼロに等しいのでそのまま進む。
「貴様ぁ! 何をやっている! 第一王子たる僕の言葉が聞けないのか! 平伏しろゴミがあああ!」
「第一王子……」
この拷問癖の迷惑男はあの嘘吐きクズ──国王の子らしい。
イライラする。
人の迷惑を考えずに弱者を虐げてデカいを顔しているもそうだが、何より国王の縁者がまた俺に迷惑をかけてくるのが気に入らない。
「すいません、平伏する意味がないので平伏しません。往来の邪魔ですし、解散してもらっていいですか」
「口答えしたばかりか指図までしたな! 立場を弁えろ! 見窄らしいゴミが! ただでは殺さんぞ! 新しい剣の試し切りに体の先から切り刻んでやろう!」
王子はキレて顔を真っ赤にして怒声を飛ばすと腰にある剣を向いて俺に切り掛かってきた。
「グア!」
避けるとそのまま頭から地面に激突してグッタリし始めた。
地面にぶつかった拍子に気絶したらしい。
なんだこいつは。
まあ邪魔が一人いなくなるのならそれでいいか。
「ああ……」
さて、国王の面影がどことなくあるこいつの顔を見ててもイライラするので進もうかと思ったら、主を失って土下座した通行人と奴隷たちが立ち上がってこちらを見たまま静止し始めた。
驚愕した顔をしているところを見ると余程衝撃的な光景だったようだ。
この世界の弱者にとって力を持っている人間が地を這う光景を見るのは一生に一度もないくらいなので物珍しいのだろう。
弱者がどこまで蹂躙されても何も思わないくせに、強者が蹂躙された時は虐げられてる弱者さえ拒否反応を起こす。
最悪な世界だ。
俺はやっぱりこの世界が嫌いだ。
「前に進めないので退いてもらっていいですか?」
「あ、え……」
当の主人が気絶しているが主人に恥をかかせた俺を通していいものか、悩んでいるようだ。
「貴様ら動くな! 殿下に危害を加えたその不埒者を今から処刑する!」
答えを出すまで待っていると騒ぎを聞きつけて騎士たちが来たのか、後ろから剣を引き抜く音と怒号が聞こえて来た。
タイムアップだ。
手荒な真似は嫌いだが強制的に退かすことにする。
「そこを退け」
「「「ヒ、ヒィィィ!!」」」
「威圧」をすると前後から悲鳴が聞こえると背後から剣を収める音と足音が遠ざかる音がし、通行人が散っていくのと繋がれた鎖に引っ張られて奴隷たちが転けるのが見えた。
手足が欠けている人が多いし、第一死にかけの多いので鎖に繋がったままパニック状態だと移動もできないか。
手刀をきって、剣スキルの「絶剣」──指定した対象を切断するスキルを発動し、鎖を切断して解放する。
「メガネさんお願いします」
ダメ押しにメガネに奴隷を回復させるよう指示を飛ばすと、光と共に奴隷の欠損部位と傷が回復して逃げ始めた。
やっと道が空いた。
これでここから離れられる。
───
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