第2話 え、元の世界に返せない? 国滅ぼすか


「なんだ貴様?」


「俺は地牛松吉です。国王陛下と謁見させて頂きたいんですが。異界の勇者が来たといえばわかると思います」


「勇者? 貴様のような見窄らしいのがか? 黒髪黒目にヘンテコな名前で確かに異界の勇者の特徴とは一致しているようだがな。陛下に確認してくる。待っていろ」


 王城の門前まで辿り着いて守衛の男に国王と謁見させてくれるように頼むと門の中に入っていく。


「入れ。謁見に応じられるそうだ」


 門の向こうで通信の魔道具でやり取りしているのか、二、三言言葉を交わす声が聞こえると門番が出てきて入るように言ってきたのでそれに応じて門の中に入ることにする。

 豪奢な壺や高そうな絵画などが立ち並ぶ廊下を進んでいくと開けた空間に出て、その奥の玉座に国王が女たちに傅かれて座っているのが見えた。


「陛下、異界の勇者をお連れしました!」


「そいつが異界の勇者だと? 異界の勇者──土岐陽気はそんな見窄らしい男ではないわ」


 国王は俺の方を見ると憶えていないようで胡乱げな目で見つめてくる。

 2年前に追放してそれっきりだったので忘れているようだ。


「陛下、俺は土岐陽気と同時に召喚された地牛松吉です」


「あー、思い出したわ。勇者だというのに村人にも劣る無能だったか。あまりにも酷かったので記憶に残っておったわ。役に立つわけもないので追放したというのに恥も知らずノコノコやってきおって今更何用だ?」


「魔王を倒したのでその報告に参った次第です」


 俺のことを思い出した国王は俺のことを心底見下すような目をすると俺の言葉を聞いて大笑いし始めた。


「ブハハハハwww 貴様が魔王を?www ダハハハハwww 腹が捩れるわwww」


 やはりというか信じてないな。

 あらかじめ想定していたのでそのための対策は打ってきてある。


「証拠ならばここにあります」


 アイテムボックスから魔王の体の残骸を取り出す。


「あ〜? 小賢しい奴よの〜。どこで拾ってきたモンスターの死骸が知らんが最上級鑑定スキル『王の目』を持つ儂にそんな子供騙しが効くと思ったか!」


 国王はスキルを発動したようで、目を光らせた。


「なッ!? な!? こんなはずは!! 嘘だ! そんな!」


 鑑定スキルで本物だと言うことがわかったようで驚愕に顔を歪ませて、額に汗を浮かべる。

 自分のスキルで出た鑑定結果なので信じるしかないだろう。


「ご、ゴミクズの貴様がこんなことができるなどありえん! そ、そうだ! 魔族に寝返り、闇の術で儂のスキルでも看過できぬ死骸をでっち上げたに決まっておる! 魔族に魂を売った不埒者めが! この魔族のスパイを国家転覆罪で即時処刑する! 騎士たちよ、この者の首を取れ!」


 何を言ってるんだこの人は。

 自分の鑑定スキルが最上級と言ってるのに、それを誤魔化せるわけがないだろ。

 まさか自分の非を認められず、事実を捻じ曲げようとしてるのか。


「動くな! 膝をついて首を前に出せ!」


 俺が呆然としていると近衛騎士たちがこちらに槍を突きつけて、断首しやすい姿勢を取るように強要してくる。

 このまま首を切られて処刑されるわけにはいかないし、第一これでは元の世界に帰れない。


「陛下、俺は魔族の手先ではありません! 陛下が見ている俺のステータスはメガネのステータスで俺のステータスではないんです。俺には魔王を倒せるだけの力があって本当に魔王を倒したんです! お願いですから俺を元の世界に帰して下さい!」


「黙れ! 地牛松吉のメガネ! 魔族の手先の貴様の言うことなど信じられるか! 元の世界に返す手段があるのならばお前などとっくの昔に帰しておるわゴミが!」


 は? 

 元の世界に返す手段があるのなら?

 何言ってんだこいつ?


「お前俺に魔王を倒したら元の世界に返すって約束したよな?」


「お前だと!! 国王たる儂に向かってその口の聞き方はなんだ貴様ぁ!! 貴様が元の世界に返せとうるさいからそう言ったのだ!!」


「じゃあ何? 俺に嘘ついたってこと?」


 俺の中で何かが壊れる音がした。

 今までこんなめちゃくちゃな世界でギリギリで保っていた理性が今の裏切りで粉々に砕けた音がした。


「は? ふざけってんのかお前」


「う、動くな!」


「邪魔だ。退け」


「ヒ、ヒィ……」


 国王を詰めようと思い近づこうとすると騎士が邪魔をしようとしたので『威圧』でどけて国王に近づいていく。


「お前自分が何やったかわかってるのか?」


「やめろぉぉぉ! 近づいてくるなああ!」


「きゃあああああ!」


『威圧』に当てられているようで国王が足をガタガタ震えさせると周りで傅いていた女たちが逃げていく。


「お前は! 俺に! 嘘をついて! なんの援助もなしに二年間人類の肉の盾として利用し続けて、魔族とかいう化け物たちと殺し合せたんです! 何度死にかけたと思ってんだボケがああ!! やっぱできませんじゃ話になんねえんだよおお!!」


「ヒィぃぃ!! すいませんでしたあ!! ああああ……」


 国王の胸ぐらを掴んで腹の中で爆発しそうになっている怒りをぶつけると国王は悲鳴をあげて、失禁する。

 失禁した程度で許せるわけがない。


「魔族みてえにテメエの国も滅ぼされてえのか! おい!」


「ヒィィィィ!! すいません! すいません! 国の滅ぼすのは勘弁して下さい!」


「勘弁して欲しかったらどうすればいいかわかるよな?」


「貴方様を国を挙げて魔王を倒した英雄として歓待して時期国王に推挙する?」


「違うだろ! 違うだろおおお!!」


「ヒィぃィィィィィィ!!」


 なんで帰りたいのにこの世界に身を置く方向性で進むんだよ。

 ちゃんと話聞いてねえだろこいつ。


「国の総力を挙げて俺が元の世界に戻れる方法を見つけるんだよ! ボケがあああ!!」


「はい! 国の総力を挙げて探させていただきたいと思います!」


「期限は一年以内な。見つけられなかったらこの国滅ぼすから」


「い、一年!? そんなご無体な……」


「何文句言ってんだ! テメエが嘘ついてなかったらこんなことにはなってねえだろうが!」


「ヒ、ヒィ!」


 とりあえず怒りが収まらないが、帰る手段を見つけさせるように約束させられたので国王の胸ぐらから手を離す。


「ハァハァハァ」


 気管が開放されて息を荒く吸い込みながら国王が怯えた目でこちらを見てくる。

 腹が立つ。

 何で被害者ぶってるんだこいつ。

 やっぱり期限待たずに国滅ぼすか。


    ───


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