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「おはよう。月曜の朝から随分深刻な顔してるね。美月、大丈夫?何か問題でもあった?」
その時、少し遅れて生徒会室に入って来た亜陽君の姿を見た途端、これまで渦巻いていた黒いモヤが一気に晴れていき、私の表情はたちまち明るさを取り戻していく。
「亜陽君おはよう。実はまた八神君に対する苦情があったみたいで」
それから、苦笑いで亜陽君にも書類を見せると、彼は何も言わずにそれを受け取り、そのまま席に着いた。
「八神問題はもうどうしようもないよ。それで、学園の風紀を乱したとしても、教師が放任してるなら、彼はそれだけ特別だって意味だから」
そして、あっという間に読み終えると、さほど気に止めることなく書類をゴミ箱へと捨てた。
流石、亜陽君。
見切りをつけるのが早い。
確かに、ここで私達が議論してもどうしようもないし、彼の言うとおり見て見ぬふりをするのが一番なのかもしれないけど……。
「はあー。やっぱり、お二人が並ぶと絵になりますね。しかも将来を約束されているだなんて。結婚式の時には是非スピーチさせて下さい。私、誰よりもお二人の愛を熱く語れる自信がありますので」
すると、気付けば一級品の芸術作品でも観賞しているかのような、恍惚とした眼差しをこちらに向けてくる渚ちゃん。
しかも、何やら話が大分吹っ飛びすぎて、私の頬は徐々に熱を帯びていく。
「ありがとう。でも、美月との愛を語るのは俺も負けてないから」
「ええ、そうですとも!私は会長の足元には到底及びませんから!」
……いや、ちょっと待って。
朝から二人は何を話しているのだろうか。
渚ちゃんの暴走具合は平常運転だけど、今日は珍しく亜陽君まで乗ってきて、熱弁し合う二人に、私は先程から恥ずかしくて死にそうになる。
おそらく校内で私と亜陽君の関係を知らない者はいないと思う。
そもそも、生徒会役員の選出理由は家柄が大いに関わってくるので、九条家と倉科家の繋がりについては全生徒に周知されている。
それに私達だけではなく、渚ちゃんやその他の生徒会メンバーだってそれ相応の身分が高い人達。
それ故この生徒会室はシャンデリアが吊り下げられたり、金色の彫刻や高級な胡蝶蘭が飾られたりで、他のどの教室よりも豪華で煌びやかだ。
だから、生徒会役員になれただけでもこの学校の誇りであり、憧れの的となる。
そんな素晴らしい組織に自分も仲間入り出来たことや、副会長という大役に選出されたことは、今振り返っても信じられなかった。
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