第12話

 部屋に入るなり、私達はどちらともなく抱き合いながら、ベッドに倒れ込みました。

 まるで、必然だったかの様に、逢えなかった恋人達の様に。

 切なげに口づけを交わす私達は、もどかしくお互いを求めました。


 ワインの酔いから、彼女との新たな酔いに身を任せていた時です。

 私は半身起こして煙草を吸っていました。


「……」

「何?」

 彼女が何かを呟きました。


「お兄さん、ごめんなさい。」

「お兄さんって僕の事?

 美人局?とか、悪い冗談…」

「いいえ、冗談ではありません。

 あなたは私の本当の兄です。」


 私は、先ほど迄身を寄せてくる彼女を愛おしいと思っていましたが、今は、この女、イカれてるとしか考えられない。


 早々と退散するに限ると、着替え始めると、

「待って、私の話を聞いて下さい。」

「話はいいよ、僕は一人っ子で、母は僕を産んですぐに亡くなった。

 そうか、君は親父が外に作った子とでも言うつもりか?」


 強く言いながら、彼女に父と似たところが無いか探しました。

 よく見ると、似ている様な、誰かを思い出させる瞳。

 彼女は真剣に私を見つめています。


「よし、話だけ聞こう。」

 促すと、彼女はホッと息を吐き、

「私とあなたは双子で生まれました。

 そして、あなたの母、つまり私達の母は亀だったのです。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る