第11話

 車内で彼女はみどりと名乗り、歳は同じ二十三歳で、

「奇遇だな。

 僕の母もみどりというんですよ。」

 すっかりリラックスしていました。


 この時、気付いていれば良かったのに、彼女との共通点を見付けてはしゃいでいた私は、もう罠の中へ誘い込まれていたのです。


 確かにこれまでは出来過ぎです。


 着いた所はリゾートホテルで、広大な敷地にゴルフ場やテニスコート、プール等、設備が整っています。


 ホテルでの食事は、パートナーが良いせいと二時近くという事もあり、大いなる食欲を発揮していました。


 普段はお目にかかれない、前沢牛も堪能し、デザートも完食すると、

「ワインが覚める迄、休みませんか。」

 すっかり、彼女のペースです。


「あの‥後は飛ばして、」

 綿津見は柄にも無く顔を赤らめた。


 女はと見ると、大きい瞳を見開く様にして聞いている。

 綿津見は空を仰ぐと、ため息一つ、

「自分で話すと決めたのだから、全てお話しましょう。」

 

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