第10話
女性は、濃いブルーのワンピースを着て、パンプスは脱いで砂浜を歩いていました。
「あの、くっ靴が濡れますよ。」
やっとの言葉でした。
その背中が振り向くと、古風で端正な顔立ちに思わずときめきました。
彼女は微笑みながら、
「ありがとうございます。
宜しかったらお茶を一緒にいかがですか?」
彼女の声は私の耳を甘くくすぐり、腑抜けの様な私は、それで昼飯も未だという事に気付きました。
「車で移動しますが、それでも宜しいかしら?」
彼女は細くて、守ってあげたい印象なのに、しっかりとした母親の目をしています。
その視線を受けると、まるで海を漂う様な、不思議な錯覚を覚えました。
誘われるまま歩き出した私は、彼女は地元の人なんだろうか、その心を読む様に、
「私はここで生まれました。
しばらく離れてはいましたが、思い出の場所に相応しいわ。」
彼女の思い出に軽く嫉妬しながら、無意識に運転席に座り、案内を頼みました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます