第9話

 しかし、眼下に広がったこの浜の印象は、清々しく爽快でした。

 思えば、この時からこの浜の持つ魅力に取り憑かれてしまっていたのです。


 駐車場に車を停め、缶コーヒーを飲みながら歩いていると、慌ただしい団体旅行者とすれ違います。

 おばさん連中は、終始元気良く喋りまくり、それに比べ男達は、宴会疲れの為か、景観を楽しもうともせずに過ごしていました。


 騒がしい団体をやり過ごすと、ふと、私がここへ来たのは偶然ではない。

 前にも来た事がある、と感じました。


 私は何かをする為にここへ来たのだ、何かに出会う為に。

 という、漠然とした思いに駆られました。


 複雑な気持ちを抱えながら、白いトンネルを抜けると、石碑を読まずとも視覚から浄土の響きが伝わってきます。


 ぼんやり海を眺めていると、砂浜に一人の女性を見つけました。

 私は、彼女の張り巡らした蜘蛛の糸にまんまと引っ掛かった訳です。

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