第13話

 やっぱり、この女、おかしかった。

 話を聞く気になった自分の馬鹿さ加減に腹が立ちました。


「そう、亀だった。

 僕には妹がいた、けれども兄さんはこれから行く所が有るから、もう行かなくちゃならない。

 じゃ。」

 立ち去ろうとすると、


「私も、今は仮の姿です。」

「僕も亀だって言いたいのか!

 それじゃ世の中、皆んな亀だ。

 いい加減にしてくれ。」


「私、明日子供を産みます。

 あなたの子です。」

「冗談はよしてくれ。

 君は妊娠しているのか、だから僕を誘ったんだな。」


 彼女は血の気の無い顔をして、今にも倒れそうでしたが、父親にされたらたまりません。

 

 彼女を残して歩き出すと、

「私、明日子供を産みます。

 二十三年前の私達の母の様に、卵を産みます。

 一つは男の子で、もう一つは亀の子です。


 母は、この浜の主でした。

 母だけでなく、私達はこの地の人間と交わって浜を守ってきました。

 それが偶然、あなたと私の祖父に出会った。


 以来、この地の人間では無く、あなたと私の父と、そして私の兄であるあなたと、運命が変わってしまいました。」

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