第5話
「父は、私が二十三歳の時に亡くなりました。
四十六歳でした。
我が家は、なぜか皆短命なんです。
父も祖父も四十六歳で亡くなっていて、その連れ合い、母と祖母は出産で命を失っています。
父は丈夫が取り柄だったのが、ある時風邪を引き、その後、肺炎と診断され入院しました。
熱は下がらない、痩せていく一方で、医師に詰め寄ると、原因が不明だと…
最善を尽くします、という言葉に縋る思いでした。
あの年の八月は猛暑で、ギラギラと照り付ける太陽が恨めしかったです。
父はますます細くなり、夏を乗り切れるかどうか、という私の心配をよそに、自分の死期を覚悟していたようです。
「今日も一日、終わってしまった。」
夕方になると憂鬱になるという父でしたが、命の残り火を楽しんでいるようにも見えました。
そんな父も、九月半ば、
「いつまでも病人していられるか。」
という言葉を残し、息を引き取りました。
父の他に身寄りも無かった私は、初めての弔事に戸惑いながら、家の中から人が減るとホッとしたものです。
父の遺品整理をしていると、机の抽斗から手紙を見つけました。
手紙は封がしてあり、宛名はありません。
父はいつ、誰に宛てて手紙を書いたのだろう。
手紙を仏壇に上げてから、思い切って開封しました。
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