第4話

 むき出しの日除けの様な岩肌を背にして、ポツンとベンチが置かれている。

 二人は、浜を少し歩き、塗装の剥がれたベンチに腰を下ろした。


 綿津見が黙っているので、女は海を見ていた。


「あなたはこの土地の方ですか?」

「はい、この町で生まれました。」


 綿津見は頷きながら、

「良い所ですね。

 それに美人の産地だ。」

 チラリと彼女の方を見る。


「何から始めたら良いのか。

 いざ話そうとすると、難しいものです。」

 思い出すかのように話し始めた。


「若い頃の話をするのは、あなたが初めてです。

 話したところで、夢でも見たんじゃないか、作り話だろうと言われそうで、今迄言えなかった。

 

 でも何だか、あなたになら、信じて貰えそうだ。

 あなたを見た時、そう思いました。


 まずは、私の父の話から聞いて下さい。」

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