第3話

 綿津見は、ここ迄言うと、照れ臭そうに鼻を掻く。


「全く、初対面の方にベラベラと。

 これだから歳はとりたくないものです。

 では、私はこれで。

 心配してくれてありがとう。」

 頭を下げ、立ち去ろうとする。


「あの、宜しかったら、そのお話聞かせて頂けませんか?」

 綿津見は、怪訝そうに女の顔を見る。


「世の中には、瓜二つの人間が三人いると言いますけれど、だとしたら、最初の方のお話を、是非お聞きしたいです。」

 早口でまくし立てた。


 綿津見は、女の真意をはかりながらも、不思議と、彼女なら信じてくれるかもしれない、と思えたのだった。


 ただ、みどりそっくりなこの顔を見ていると、めまいがしてくる。


 そして綿津見は、昔、ここで出会った女性の話を始めたのだった。

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