第27話【勝利】
中央で激しい戦いが繰り広げられている中、一人の馬に乗ったオーガ兵がゴブリン兵の後方に現れた。その姿には異様な何かがあった。
彼の右手に握られている長い剣には、血まみれの首が突き刺さっていた。緑色に染まったその首は、間違いなくゴブリンの長――さっきまで戦場を支配していた存在の無惨な末路だった。
剣に刺さった首が揺れるたび、周囲のゴブリン兵たちの顔色が蒼白に変わり、その場から後ずさり始める。彼らの目には恐怖が浮かび、その場から逃げ出したい衝動に駆られているのが一目瞭然だった。
そして、一人のゴブリン兵が「退け!」と叫ぶと、それが合図となり、他のゴブリン兵たちも一斉に散り始めた。恐慌状態の中で押し合いへし合いしながら、誰もが命の危険を感じ、後退していく。
その様子を見届けた主人公ルークは、戦いの緊張が一気に解けたかのように、膝から力が抜け、地面にへたり込んだ。
全身から流れる汗が体を冷やし、肩で息をするような激しい呼吸が自分の鼓動とともに耳に響く。彼の視界には、混乱しながら逃げ去っていくゴブリン兵の背中が次第に小さく見えていく。
ふと顔を上げると、近くで戦っていた弟たちも、この勝利を喜んでいるのが見えた。顔には安堵と歓喜が交差し、互いに肩を抱き合ったり、雄叫びを上げたりして、
ようやく訪れた勝利の瞬間を噛み締めている。弟たちの目にも、戦いの疲れを超えた誇りと喜びが輝いていた。
しかしルークの心には、まだ別の重荷があった。この戦いで勝利を得たとはいえ、すべてが終わったわけではない。彼は内心で、今後の戦いが待っていることを静かに認識していた。
自分達の計画には、さらに次の段階がある――残るゴブリン勢力との戦いが。
その時、レンジが駆け寄ってきた。顔には笑顔が浮かび、勝利の喜びに満ちた目でルークを見つめる。そして、ルークの肩に手を置きながら、少し弾んだ声で言った。
「ルーク、ここで勝ち鬨を上げろ!俺らの勝利をみんなに示すんだよ!」
ルークは少し戸惑いながらも、レンジの期待に応えたいという気持ちで、深く息を吸い込んだ。そして、全身に力を込め、気持ちを込めて雄大な声で勝ち鬨を上げた。
「皆よく戦ってくれた!勝利は我らのものだ!」
その力強い声は、周囲にいたオーガ兵士たちに響き渡り、皆が拳を突き上げながら応えるように歓声を上げた。勝ち鬨の声が空に響きわたり、戦場は勝利の歓喜に包まれた。
勝利の喜びに包まれた戦場の喧騒が少し落ち着いた頃、ティア、カゲロウ、リサがルークのもとへやってきた。
彼らの顔には疲れが見えるものの、どこか達成感と充実感が滲んでいた。ルークは、彼らの姿を目にするやいなや、深々と頭を下げ、感謝の気持ちを言葉にする。
「ティアさん、リサ、カゲロウ殿……本当にありがとう。皆のおかげでこの戦いに勝てた。」
ルークのその一言に、ティアは少し照れくさそうに微笑みながら、手を軽く振った。
「そんなに感謝されることではありませんよ。作戦が素晴らしかったから、それに従ったまでです。」
その控えめな態度にも、ティアの実直さが滲んでいた。
リサも、ルークを見つめながら嬉しそうに話した。
「正直、こんなにうまくいくとは思っていなかったよ。ルーク、あんたは将来凄い指揮官になるね。」
その言葉に、ルークの心は少し温かくなり、さらなる自信が湧いてくる。仲間たちと共に戦えることの喜びが、深く心に染み渡っていた。
しかし、そんな余韻に浸る間もなく、カゲロウは冷静な表情を崩さず、やや不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。
「うまくいくのは当然。私がいたからな。」
少し皮肉交じりに言い放つカゲロウの言葉に、リサは小さく笑いを漏らし、ティアも笑みを隠せなかった。カゲロウはふっと微笑むと、そのまま鋭い目つきで遠くの戦場を見つめ、
「予定通り、次の戦いの準備をしてくる。油断せずにいるように。」と言い残し、背を向けて立ち去っていった。
ルークはカゲロウを見送った後、ティアに顔を向け、次の指示を伝えることにした。
「ティアさん、予定通り、次の作戦を2日後に行う。準備をお願いできるか?」
ティアはルークの頼みに小さくうなずき、凛とした表情で「わかりました」と答える。その目には決意と覚悟が宿っており、再び戦いに臨む意志が感じられた。
ティアが小さくうなずいて立ち去ると、ルークはふと空を見上げ、今の戦いの苦難を思い返した。次の戦いで、長きに渡るゴブリンとの争いに終止符を打つ。
緊張と決意が絡み合う中、彼は深く息を吸い、次の作戦のための準備をするために、弟達に駆け寄った。
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