第21話【神の経験値 ミッション】

 その後、軍議は2日間にわたり、慎重な議論と検討が繰り返された。


 戦略の確認と練り直しが行われ、ようやく方針が固まった。人間の集落の町長とカゲロウも議論に加わり、細部にわたる意見交換が交わされる中で、時には互いの思惑がぶつかり合うこともあった。


 しかし、最後にはそれぞれの立場と利害が一致し、皆が一つの目的を共有するに至った。


 やがて、全体の軍の指揮系統が決まり、町長とカゲロウは一旦それぞれの集落へ戻ることになった。彼らも戻った後、すぐに戦力の集結や装備の調達に向けての準備を進めることになる。


 ルークとその弟たちも自軍の再編成に取り掛かった。今回の編成では、ルークが五十人を直接指揮し、残りの兵士たちはそれぞれ弟たちとティアが指揮する形を取ることに決定した。


 最初、ティアは軍の長の役を引き受けることを渋っていた。


 だが、彼女の優れた剣技と判断力を知っているルークは、その役割が適任だと信じていた。ルークは直接彼女と手合わせを行い、彼女の実力を兵士たちに示す機会を設けた。


 手合わせの結果は圧倒的で、彼女の強さに兵士たちも感服し、誰もが彼女を軍の長として認めるようになった。こうして、ティアは正式に軍を率いる立場を引き受けることになった。


 一方で、オーガの集落は戦の準備に奔走していた。


 武器や装備の整備、戦場で必要となる食料や物資の確保など、集落全体が慌ただしく動き始めていた。これまでの静けさが嘘のように、戦を目前にした緊張感が空気に漂っていた。


 しばらくして、カゲロウが再び集落に戻り、ある情報をもたらした。


 カゲロウの調査によると、ゴブリンたちは動きを見せており、以前大広間にて降伏勧告をするか2週間を期限を決めていたが、卑劣にもその前に全軍でオーガの集落に攻撃を仕掛ける意図を持っていることが分かった。


 カゲロウの報告は緊張をさらに高め、いよいよ刻一刻と戦が迫っていることを感じさせた。








 戦までにはまだ時間があるため、翌日ルークは「神の経験値 ミッション」の効力を確かめるため、朝早く幼馴染と数名の護衛兵士を伴い、南の森へと向かっていた。


「神の経験値 ミッション」を確認したところ、「一角ウサギ」を十匹倒すことで味方全体の防御力が強化されるというミッションが表示されていた。


 その効力がどのようなものか、また戦に役立つのか見極めるべく、「一角ウサギ」が多数生息していると言われる南の森で狩りを行うことにしたのだ。


 リサからの話によれば、一角ウサギは非常に弱い魔物で、オーガたちが日常的に狩りの対象とすることも多く、特に危険視することはないという。


 ただし、森には他の魔物も生息しているため、注意が必要であるとも念を押された。森に足を踏み入れて数分が経った頃、ルークたちは一角ウサギの姿を確認した。


 一角ウサギはふさふさした体毛に、額に小さな角を持つ魔物であり、こちらの気配に気づいても逃げようとせず、のんびりと草を食んでいる。


 その姿を前にしたルークは、これまで一度も生き物を殺めた経験がなく、しばし躊躇した。しかし、護衛兵士たちが慣れた手つきで次々と狩りを始める様子を見て、自分も意を決して剣を振るい、一匹の一角ウサギを仕留めた。


 その瞬間、「神の経験値 ミッション」の表示が変化し、1/10と記録されたことを確認した。ルークはさらに狩りを続け、次々と一角ウサギを仕留めていった。


 狩りを終え、十匹を討ち取った時、「神の経験値 ミッション」が完了したことを示すメッセージが表示され、驚きと共にステータス画面を確認すると、自分自身の防御力が確かに上がっているのを確認した。


 ・名前:ルーク・オルガノ

 ・種族: オーガ

 ・年齢: 18

 ・職業:ストラテジスト

 ・ステータス:

 ・力:E

 ・魔法力:F

 ・防御力:E ➡ D

 ・魔防力:F

 ・統率:C

 ・知略:B

 ・政務:C


 さらに、近くで一緒に行動しているリサを鑑定スキルで確認すると、防御力のレベルがアップしていた。


 名前:リサ

 種族:オーガ

 年齢:18歳

 職業:魔法使い

 力:F

 魔法力:D

 防御力:F ➡ E

 魔防力:C

 忠誠心:S

 スキル:ファイアーボール


 また、画面に戻ると、ミッションのカウントが0にリセットされていることも確認できた。何か規則的なシステムが働いているようだ。


 興味を持ったルークは、さらにウサギを狩ることを決意し、再び一角ウサギを10匹討伐した。


 次の瞬間、防御力が再び強化され、自分の防御力がDからCになったことをステータスで確認した。


 そして、ミッション内容が新しい目標に切り替わり、次は「ストライクホーン」と呼ばれる魔物を倒すことが要求されていることがわかった。


 その名は初めて聞くもので、幼馴染も知らないらし。また、その他のミッションで表示された魔物については、そもそもオーガ集落付近にはいないとのことなので、一旦集落に戻ってこれまでの成果を確認することにした。


 集落に戻り、改めて鑑定スキルを使用すると、周りのオーガ兵士たちも等しく防御力が上がっていることに気づいた。


 ルーク自身も防御力が向上しているのを知りつつ、それを実感できるかというと難しい。身体を動かしても特に変化はわからず、この防御力の強化が今後の戦で仲間たちにどのような影響を及ぼすかを見守る気持ちである。


 また、一方でティアやカゲロウの防御力には変化が見られないようだった。


 どうやらこの「神の経験値 ミッション」の効力は、同族にしか適用されない可能性が高いのであろう。

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